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好きだってことを忘れるくらいの好き

坂元裕二朗読劇 2021 「忘れえぬ 忘れえぬ」、「初恋」と「不倫」 4/13夜 初日『忘れえぬ 忘れえぬ』レポ

【盛大にネタバレしてます!!!】

 

 4/18の『不帰の初恋、海老名SA』『カラシニコフ不倫海峡』はこちら↓

sherry5honey7jouer.hatenablog.com

 

⚪︎衣装

一生さんは、髪の毛は前髪なし真ん中分け(で合ってるのかな)

みんな気になってた眉毛!程よくありました!!!喜べ!!!!!

服装は白シャツ、首の隙間から白地に黒線で模様の入ったスカーフのようなものが中に見えて、うまく言えないんですがタイのようにされてました。

そこに黒くて膝丈ほどのロングジャケット。ズボンはコットンか麻地のような薄手の生地で灰色がかっていて、少しゆったりしたシルエット。靴下は黒、靴は紐靴で黒。

途中で気づいたんですが、タイと靴下の違いだけ除けばこの格好ってカルテットの時の家森の演奏スタイルでは…?と思った。

 


酒井さんは黒のVネックのシャツ、腕の袖元に銀のスタッズのような飾りが転々とついていた気がする。スカートは白でテロッとした光沢のある生地。

(4/18 追記

シャツの丈が下手側だけ膝くらいまで長く、前身頃が上手側にかけて斜めに短くなっていく面白いデザインだった…13日と同じシャツだと思うのに気づかなかった。

膝から腰くらいまではシャツが覆っていて、その下にスカートが見える感じでした。)

 


⚪︎舞台装置と演出

一生さんが下手、酒井さんが上手、白い大きなひとりがけソファが二つ置かれている。

酒井さん側だけ白いクッションがあって、酒井さんは朗読時にクッションを膝に置いて、その上に腕を置いて本を持ってました。

一生さんは少し足開いて深く座ってて、少し右重心だったかな。本を基本的に右手で支えて、左手で捲りつつページ押さえてたんですけど、その右手の骨張った陰影が私の席からばっちり見えたため、好きすぎてダメだった…右手が今日一番エロかったです…

 


装置は特にないのですが、演出として音楽と照明アリ。

作品が1年ずつ夏の日を描いていき確か5年分進んでいくので、1年ごとに暗転&音楽がかかる感じ。

照明が本当に素晴らしくて、湖畔の話だったからか湖とか川とかの話の時に少し青みがかってたし、湖で夕日がキラキラ「鳴っている」時の橙が強くなる照明がめちゃくちゃ美しくて、朗読と合わせて脳内で完全に映像が流れて泣きそうになりました。

往復書簡のため、語り手が1人のみで長台詞になるときはどちらかだけに照明が強くなって、片方は暗転、というところも随時ありました。

 


⚪︎『忘れえぬ 忘れえぬ』について

書き下ろしの今日が初演ですよね…?内容を知らない分、展開が読めなくて本当に面白かったです。

同い年の少年と少女、11歳から4〜5年間の物語で、夏休みにある条件のある子どもだけ入れられる湖畔の学校のような施設が舞台です。次第に夏以外に過ごしているそれぞれの家庭環境の辛さ(まさに「初恋」と「不倫」が絡んでいた)や、施設のある秘密が明らかになっていって、互いが互いの救いや拠り所になってはすれ違う様が描かれていきます。

 


一生さんについて。冒頭のカタコト?というか文法がめちゃくちゃな少年の話し方から、少しずつ流暢になっていく変化とか、相手を拒絶するぶっきらぼうな言い方や告白をする時のあの低い声で言い切られる話し方、私めちゃくちゃ好きなんだなって思いました。

冒頭5分くらい目の前に一生さんが居る距離感のバグと声の良さに慣れなくて動揺して震えてました…

酒井さんは声が高めというか可愛らしい響きなので、より対照的で良いのかもしれません。

 


「忘れえぬ」こととは何なのか、タイトルの意味が最後に分かると、やっぱり坂元さんらしい話だなと思いました。

手紙やメールをやり取りするということは、相手の不在が前提にありますよね。一緒に過ごす時間が短く限られていても、「離れてる時に育むのが恋だ」みたいな台詞どこかでありませんでしたっけ。

不在だからこそ相手を想うこと、送るかは別として心の内を言葉にしていくこと、その営みはどんなにその物語の設定や世界が変わっても、すごく根本的で強靭で美しいと思ってしまうな…とぼんやり思いました。

 


それは、一生さん演じる最里(もり)くんが酒井さん演じる木生(きお)ちゃんから言葉をもらっていくことや、

森くんが眠れない木生ちゃんに怖い話を作って話すこと、

それから中盤から鍵を握る人物である、事故で目を覚まさないまま施設に居る「ゆっくりさん」に対して、最里くんがいつか目を覚まして治ってほしいと願う気持ち、

そういったやりとりに象徴されるように思いました。

最里くんと木生ちゃんは恋愛の側面があるけど、最里くんからゆっくりさんに対しては「祈り」なんだよね。別に恋愛じゃなくても、不在の相手に対する想いは、手紙という「祈り」として介在することができる、ということを改めて認識して、私としてはグッと響きました。

 


でも、一番良かったのは坂元さんが「恋」というものを定義するのに、木生ちゃんの台詞として「恋とは世界から自分たち以外の敵を遠ざける闘いのことだ」みたいに表しているのが目から鱗で感動した。

恋は世界が美しくなるのではなくて透明になることで、嫌なものや人を遠ざけて見えなくして、相手と2人きりの世界になるからこそ美しく見える、のだと。

 


2人が夏休みに会えていた時、いつも待ち合わせていたのが「6時3分」から動かない時計台だったこと。止まってしまった時の中に2人だけ生きてたようで、それは蚊帳の外の私からしても美しいと思ってしまいました。

 

坂元さんが紡ぐ物語は、不思議な役名とか恋の捉え方とか手紙のやり取りとか、通奏低音としてどの作品にも通ずる何かがあっていつも素敵だし、私はそういうところがやっぱり好きだなぁと改めて思い直した初日でした。

 

(何だったか忘れたけど焼き魚にタルタルソースかけて、穏やかな木田さんと林田さんと森田さんがめちゃくちゃ喧嘩になるシーンとか、唐揚げレモンの変奏じゃんと思ったし、「バカヤロー」って言うとこがあって、言い方が家森っぽかった。チラつく家森…)

 

 

 


あっカテコの一生さん、酒井さんをレディーファーストで先に舞台袖に通してて紳士だったよ!!!好きだってことを忘れるくらいの好き!!!!!