je joue

好きだってことを忘れるくらいの好き

『岸辺露伴ルーヴルへ行く』

※原作既読、テレビシリーズ全て視聴済

※5/18(木)最速先行上映会、5/27(土)舞台挨拶付き中継2回、東京ティーチイン×3回含む、計11回鑑賞済。

※批評的部分とファンの感想部分が混ざっています。文体も変えてます。

 

NHKドラマシリーズからの圧倒的なクオリティと世界観が強靭なため、2時間枠のスクリーンに乗せても全く遜色なかった。

むしろこれは映画でやるべきスケールだなと思うほど、ひたすらに画が美しい。

タイトル通りのルーヴル美術館のその存在そのものの美しさ、大きさ、歴史の重さ、雰囲気…予告で「人間の手に負える美術館じゃあない」と出てきたその通りの佇まいは、絶対に映画館で観るべき。

また、今回のテーマである「黒」になぞらえるならば、映画館という漆黒で満たされた空間で観る以上に相応しい環境があるだろうか?

(ぜひ映画館で観てください!)

ドラマシリーズの怪奇さはそのままに、少しエモーショナルで、血の通った人間らしい成分多めの露伴も新鮮だった。

漫画のためなら何をも厭わないストイックな漫画家である彼もまた、一人の人間であることが感じられただけで、観る価値があると思う。

 

 

↓↓↓以下、ネタバレ↓↓↓

 

 

 

 

 

 

【小ネタと感想】

 

カメラワーク

ドラマシリーズから多用されていた、低い位置から見上げたり、全体が斜めに傾いていたりする不可解な位置からのショットは今回も健在。

映画館の前方に座っていると、本当に露伴先生に見下げられながら “ヘブンズ・ドアー”されている気持ちになる。これだけで映画館に行く価値があると思うくらい、正直どきどきして緊張してしまった…

また、青年期露伴パートでの、「黒い絵」について語る奈々瀬の横顔の真っ黒なシルエットと、その影越しに奥に露伴が映るショット。ずっとあの絵と怨念と共に存在していた奈々瀬への解釈の最適解だ…と見とれてしまった。
 
お家芸

オークションで競っている時ににやにやする表情が露伴先生だし高橋一生だ~ってなりませんか。ヨッ!\お家芸

帰ってからあのバイヤー(?)が侵入してきた時、歩きながら指先だけで軽くヘブンズドアーしてるのが衝撃的だった…なにあれ格好良すぎる。


パリの記憶をたどって

パリパートの最初で、ルーヴルの事務所が映った時にサイレンの音が鳴っていて、あれパリっぽいなーと思った。日本のサイレンと音が違うので印象に残るのと、パリ市内の至る所であの音を聴いた記憶がすごくあるので。

あとルーヴルってあんな空いてることないです…平日でもなかなか入場チケットが取れなかった記憶があるのですが…(パンフを読むと休館日の火曜+水曜閉館後~木曜朝の撮影とわかる)


衣装

最高なのは毎回のことですが、今回のパリ滞在時の衣装が露伴と泉と真っ黒に統一されていて凄く良かった。ルーヴルの壮麗で豪華な建築・収蔵品、パリの歴史ある美しい街並みと曇天を背景にしたときに、シンプルだからこそ映える。

特に露伴の黒タイのお衣装めちゃくちゃ好きだなと…「先人の作品の眠る場所だ(中略)敬意を払え」という台詞通り、より畏まったスタイルになっているのと、単純に高橋露伴先生に似合っていて…

 

ちなみに、キラリナ吉祥寺で衣装の本物を直接拝見できて震えた…タイが通せるようになっているブラウスの首元とか、アウトしているけど下は黒くなっているブラウスとベルトの部分とか、Gペンモチーフ靴とか…

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テレビシリーズからのつながり

テレビシリーズの『くしゃがら』の時の、路地裏で十五と対峙した時のあの「これぞジョジョ立ち!」ポーズは、『ルーヴルへ行く』原作の、まさにルーヴルに降り立った時の両開きページのあのポーズを取り入れていたと高橋さんが明かしていて、一瞬で全てがつながってうわあああああ!と驚いた。

その際に映画化が完全に決まっていたわけではないようだし、伏線とも違うが、壮大な回収…!

 

セルフ“ヘブンズ・ドアー”の威力

原作にあったシーンなのに、映像化するとこんなにも説得力が増すのか!と圧巻されたシーンの一つ。

ヘブンズ・ドアーするとちゃんと文字が消えて真っ白になり、「全ての記憶を忘れる」書き込みをこすると文字が戻っている…凄い…

考えてみれば当たり前ではあるが、露伴バージョンは目元だけの仮面のような形状だったので、あの狭い面積でもきちんと文字が消えては出ていて印象に残った。


フランス語について

ルグランの絵の背面部分が一瞬しか映らないので、最初あまりよく読めていなかったのだが、ルグランの走り書きは以下かなと。

"Ceci est le noir vu au Louvre. remords" (ルーヴルで見た黒、後悔)

 

そもそもオークションの冊子に記載されていた作品名が"Noire"つまり女性形なのが気になった。

普通に「黒」という色だけでタイトルをつけるなら男性形"Noir"が妥当だと思うが、描かれている対象=「黒い絵」に描かれているのが女性(奈々瀬)であることを暗に示しているのかなと推察した。

ただし、黒髪(Cheveux noirs)は複数形なので除くとして、蜘蛛(Araignée)は女性形なのでそちらを指しているのかもしれないが。

 

登場人物に関しては、エマさんのフランス語が、日仏ミックスとはいえフランスにずっと住んでるネイティブのフランス語を意識されてたとのことで、劇中でも凄くその工夫が感じられた。

例えば、Louvreのrの発音をわざとネイティブにしている癖の強さとか、モナ・リザの前でのやりとりでいきなりフランス語(「でも…」を“Mais,ah…”と言い澱む)が入ったりするところ。

本当に両方の国にルーツを持つ美波さんが演じられていてよかったし、ご本人も両方の国が舞台になる作品に出演されるのは初めてと仰っていた。


そして度肝を抜かれたのが、祖母の形見のあの眼鏡(サングラス?)をかけて、フランス語をペラペラと話し出す露伴、つまり一生さんである…オイオイオイオイそんな設定聞いてないよォ…

少なくとも数年勉強している私より全然流暢でした(お前がもっと頑張れという話)

個人的に印象的だったのが、Z-13倉庫でフェルメールの絵が見つかり処分しようと持ち去る消防士を引き留めるシーン。

”Pourquoi?(とんでもない)”と話しながら挑発するような露伴の目つき・表情と発音、けしからんのでめちゃくちゃ集中して観ていただきたい…

 

 

【音楽について】

 

青年期の露伴パートの音楽

とても変わっていて面白かった。伝統ある旅館の佇まいと日本らし長唄の旋律の相性の良さは想像の範疇でありつつ、とても気持ち良く流れていく時間を感じた。

しかし、ガムランの不思議な音色がそこに乗ることで、日本のどこかの物語でありながら、どこかこの世のどこにもない場所のような異様な雰囲気が漂うのを感じた。

個人的に、元々ガムランの音色すごく好きで、まさか劇伴で流れるとは思わなくて新鮮だった。

 

多様な劇伴

上述の日本パートの最後の方でバロックっぽいなーと思う曲があり凱旋門シャンゼリゼ通りではどこかラヴェルドビュッシーを匂わせるようなフランス音楽感があり、Z-13倉庫で露伴が奈々瀬に助けられるシーンでは、中世の吟遊詩人の弾くリュートのような旋律があり(多分ハープだと思いますが)、バラエティに富みながら各々存在感のある劇伴だったと思う。

白眉はラストの江戸時代パートの音楽。弦楽の重厚で美しい響きは、哀しくも美しく黒く儚い山村夫妻の物語と共に紡ぎ寄り添うのに、これ以上なかったと思っている。あの音楽だけでもう泣きそうになる。

 

テレビシリーズからお馴染みの『大空位時代

岸辺露伴と言えば、と思えるほど象徴的なあのテーマを最後まで聴くことができたのが初めてだと思うので、大変感動してしまった。テレビシリーズより弦の編成を大きくしているとのことで、それを映画館の音響で聴くと、本当に迫力や重厚感があり、素晴らしい幕引きに思える。

 

 

【泉とエマ】

 

原作にはなかった泉とエマのシーンが一筋の光のような救済に感じられた。

そもそもエマは原作では助からないし、泉は出て来すらしない。(エマは、辰巳や消防士たちと違い美術品窃盗に関わっていなかったから、生かされたのかもしれない)

泉が黒い絵の中の女を見てもなんともなかったことを、パリパートのラストで露伴が突っ込みを入れていたり、泉の父がルーヴルのピラミッド前でニコニコで写る渡辺一貴監督のお写真という「わかる奴だけわかるネタ」だったりするので、なんとなく少し笑えるシーンとして流されてしまうような気がする

 

しかし、泉京香自身は勿論祖先含め、泉家には後悔や罪の意識を携えたまま死んだ人が居なかった、ということと捉えられないだろうか。(制作側にその意図はないと思うけれど)

あれだけルーヴルの関係者達が悉く襲われ、露伴自身ですらヘブンズドアーが使えなければ助からなかったであろう、世の殆どの人間が逃れられない血脈の強さを説く物語なのに。

 

だからこそ、謂わば「泉家が脈々と継ぐ善性」みたいなものの稀有さが際立つ、と私は感じた。

それは、今は居ないニコニコと記念写真に収まる父の「ちょっとそばに居たかった」、それだけでパリに来たと話す泉の父娘の関係だけでも説得力があると思うし、子を喪った悲しみを引き摺るエマを慰めるとしたら、彼女以外にその役割は務まらないはずだ。

断ち切れない呪いをかける“血脈”はまた他方で、生死も超えて身内の誰かを想う絆としても継がれていくものである…そう気付かせるだけで十分、二人の出番の意味を感じられると思う。

 

 

【仁左右衛門パートの功績】

 

今回の映画化において終盤の江戸時代の日本パートの追加こそ、きっと多くの方の印象に強く刻まれた白眉のシーンではないだろうか。

原作では殆ど触れられなかった仁左右衛門と奈々瀬の真実を膨らませ、そのパートをきちんと映像化したこと。

況してや、仁左右衛門の顔はわからないように描かれていた中で、露伴とよく似ている顔である=高橋一生一人二役とする英断。

 

英断と感じた理由として、まず露伴と仁左右衛門の顔が似ていることで、原作とは違ってZ-13倉庫で奈々瀬が露伴を救う展開に納得が行く。

夫の面影があり、更に同じ絵を描くことを生業とする露伴ならば、自分たちを止めてもらえるかもしれない、この人にこそ止めてほしいと考えても不思議ではないと思うし、

夫と同じ顔の露伴を夫が襲うという状況も受け入れられるものではなかっただろう。

 

加えて、仁左右衛門と露伴を演じ分けられるのは高橋さんの芝居の凄みありきであること。

このパートの冒頭の祝言の場面で、手前に居る奈々瀬から奥に居る仁左右衛門の顔にピントが合った瞬間―つまり、【仁左右衛門 (演・高橋一生)】がわかった瞬間、『おんな城主直虎』の小野但馬守政次を連想した方が大半ではないだろうか。

何故なら、一世一代の伝説的な芝居と言っても過言ではなかった政次と同じ、月代に髷姿の高橋一生をそこに見てしまったからだ。

 

実は前半の日本パートにて、奈々瀬が露伴に「似ている」と話す台詞が加わっていたために、その時点でもしかしたら仁左右衛門も演じるのか…?と想像していたのだが、実際のシーンは想像の範疇を軽く超えるものだった。

自分の顔とそっくりな仁左右衛門を見てゆっくり目を閉じる露伴、手前から奥へとピントが移ったあの一連のシークエンスを観た時の衝撃と、全身を駆け巡った感情のうねりを、私は一生忘れないと思う。

 

個人的には“一生さんのファン=イセクラ”の端くれとして、あのパートに“俺たちの見たい高橋一生”が全部詰まっていたとも思っている。

絵師として純粋に画法を追求する真剣な横顔と筆を運ぶ手先、奈々瀬を大切に想うことがわかるやさしい眼差し。

一転して不遇の境地に追い込まれ、更に奈々瀬の黒髪を描くことや黒い樹液に取りつかれた姿。

後ろ手に拘束される姿、奈々瀬の手を取ろうとしながら呻く声、奉行所の者たちを押しのけ殺してしまうほどの勢い、神木に向かって一心不乱に斧を下ろし真っ黒に染まりながら筆を取る姿、黒染めの顔と閉ざされた眼に一筋流れる涙(一生さんのお芝居で自然とそうなったとのこと…!)、気付けば蜘蛛の巣だらけの住まいに二人寄り添う姿…

本来はきっと優しく真っすぐな方だったのだろう。そんな一人の人間が追い込まれて変容するその落差と同時に、グラデーションのように移ろっていく一人の人間の人生として見せる。

「狂気」と一言で言ってしまうには惜しいくらい、その表現のバリエーションに改めて感服した。

 

 

余談だが、人物デザイン監修と衣装監修の柘植さんの描かれた仁左右衛門のスケッチがパンフに収められているのだが、見た瞬間にエゴン・シーレの絵みたいだなと思った。

何かに憑りつかれ、人非ざる感と気迫を感じるイメージが当初から想定されていた人物デザインの確かさと、それを体現している高橋さんが凄いことを実感できるので、ぜひ確認してほしい。

 

この配役の妙と芝居の凄みは、高橋さんご本人の岸辺露伴への愛情だけでなく、渡辺監督が如何に高橋一生という役者を今までの共作の中でよく見ておられて、理解しているからこそ実現したのだと感じられた。

すなわち、渡辺監督と高橋さんの一連の共作(露伴ドラマシリーズは勿論、『おんな城主直虎』『雪国 -SNOW COUNTRY-』)を踏まえての本作という流れがあってこそ結実した作品であることを、ここで強調したい。

漫画である原作を補いながらスケールアップさせ、“高橋一生の演じる岸辺露伴”を主役に据えるべき理由と、物語の説得力・訴求力を確かに強靭にすること。映画でしかできないことを実現させること。

本の小林靖子さんの鮮やかな手腕はもちろんのこと、渡辺監督の素晴らしい采配に本当に拍手を送りたい。

お二人の仕事をリアルタイムで追ってこられたことをとても嬉しく思う。そういったファンが堪らないような、思わず心が震えてしまうような最高傑作が出来上がっていると感じた。

 

また、付け加えておきたいのが、先行上映会にてサプライズでご登壇された際にも、高橋さんが「日本パートを見てほしい」と仰っていたことや、パンフからも相当な思い入れをもって演じられたとわかることだ。

本作は『岸辺露伴ルーヴルへ行く』というタイトルであるが、真髄はルーヴル美術館だけでなく日本で撮影された2つのパートにもしっかりと存在していたと思う。

パリと対照的に、日本パートの自然の美しさや多湿な日本の環境が、露伴の過去の記憶の中のノスタルジーさや、ねっとりとした情感を伴った“私的な記憶”をよりリアリティのあるものに仕上げていた。

露伴が“読む”仁左右衛門パートも、もはやノスタルジーを超えたリアリティを伴った悲痛な哀しい先祖の歴史を、日本の原風景のような緑の中に映していた。

あれだけ壮麗なルーヴルやパリの街並みと、黒い絵が人に作用する強さと恐ろしさに負けず、強烈な印象を刻み込んでくるのは流石としか言いようがない。

物語からしても、仁左右衛門と奈々瀬の過去から始まっている、という点で非常に大切なパートだし、前半の日本パートにて原作より瑞々しく初々しい露伴像を見せた、長尾さんのお芝居も大切な要素であった。 

 

 

【「この世で最も黒い絵」の結末】

 

「黒い絵」が最後に燃えて無くなるのが、あの絵の結末として相応しすぎる幕引きとなっていた。

原作では焼却処分されたらしいとの曖昧な記載に留まっているところ、きちんと燃えていく様が収められていたことに意味を感じる。

 

そもそも怨念で人が死んでいくのを断ち切るには、物理的にこの世に存在しなくならなければならない。

そこでどうやって無くなるのかを考えたときに、露伴邸での会話を思い出したい。黒の顔料の多くは何かが燃えた炭からできるのだと

それから、ヘブンズ・ドアーされた奈々瀬が最後に手にしていた黒い紙のようなもの、あれはあの絵の燃えかすとして残った炭なのではないだろうか。

それを木の根元にそっと置いて、露伴と言葉を交わしてから奈々瀬は消えるのだ。

 

つまり、「黒い絵」は炭というやはり“黒い”物体になっていて、おそらくかつて神木だった木の、樹液が流れ出ていたその出口を奈々瀬自身が“閉じている”のではないだろうか。

露伴があの絵とルーヴルで対峙し、ヘブンズ・ドアーで過去を一旦断ち切り、燃やされることで、やっと山村夫妻自身も絵の呪縛から解放されたはずだ。

それを経た後だからこそ、その呪縛からの解放を示す象徴として、奈々瀬自らが“閉じる”一瞬を描いているのだと思う。

(注:何度か観た上で気づいたのですが、あの木は神木でなく、墓石のような何かがある木という解釈のようですね…?ちょっと上述の解釈に無理が生じるかもしれませんが、違う場所でも奈々瀬のその行為には意味があったと捉えたいです)

 

露伴自身も、かつては奈々瀬の心を読むことを踏みとどまったが、時を経て年齢を重ねたことや、ルーヴルでの一件を経てやっと読むことができている。

彼自身も良い意味で過去から距離を取り、「あの夏も僕にとって必要な過去の一つだ」と認めることができる時間が必要だったのだと思う。

奈々瀬が自分から手を添えてヘブンズ・ドアーに導くその一連の流れの美しさと、そこに至るまでの長い長い時間を想うと、込み上げてくるものがあった。

本当のラストでも、あの原稿をきれいな形のまま露伴に“返した”と受け取れるのも、本当に解放されたことを予感させる終わり方でとても良かった。

 

 

【ルーヴルで交差する芸術家たち】

 
原作に無かった要素として、辰巳やルグランというオリジナルキャラクターを取り入れ、美術品の贋作を用いた窃盗団の顛末を取り入れている。
かつて露伴が祖母宅にて黒い絵に出会っており、ルーヴルに買い上げられたことで約20年後に誘われるという運命性や、日本とパリ両方に窃盗団が居ることでより事件性を高め、「ルーヴルへ行く」能動的な露伴ですら巻き込まれている一面もある流れを作り、原作から膨らませる点があったのだと推察している。
 
しかし、最も重要なのは、同じ絵を描く者としても全く違う運命を辿った露伴・仁左右衛門・ルグランを対比させることにあるのではないかと考えている。
もっと具体的に言うならば、露伴≒仁左右衛門≒ルグラン(+辰巳や故買屋)だろうか。
まず、美術品を金儲けの道具としてしか利用しなかった辰巳や故買屋、そしてそれらに巻き込まれている画家・漫画たちという大きい構図がある。
それに協力しながらも「黒い絵」から"後悔"を見て、模写を残しながら死んでいったルグランは中間的な存在だろう。
しかし、ルグランも緻密な贋作を残せるほど素晴らしい技術を持った画家であったとも捉えられる。
 
仁左右衛門は一番悲劇的な運命を辿るが、本来は蘭画など国やジャンルに関わらない表現を求めているし、「黒い絵」が生まれてしまったとは言え、奈々瀬の黒髪を表現するための追求の結果と考えると、研究熱心な根っからの絵師なのだ。その点、やはり仁左右衛門と露伴はかなり似ていると思う。
贋作ビジネスや国家と歴史という大きなものに潰された点では、ルグランも仁左右衛門も犠牲者と言えるだろう。
 
また、そもそもルーヴル美術館が辿った歴史も複雑で、かつて要塞・宮殿・国の省庁などとして使われていたし、収蔵されている作品には戦争と略奪によって齎されたものもある。それらを生み出した様々な時代の芸術家たちやどこかの国の先祖たちの人生も様々だっただろう。決して綺麗事だけで芸術は生まれないことも忘れてはならない。
 
そして、岸辺露伴シリーズが荒木先生の描かれた漫画であるということも踏まえるならば、虚実を超えて芸術そのものの美しさや尊さと共に、それを追い求める者の運命の儚さ、純粋に突き詰めていくことの難しさが迫ってくるように思う。
岸辺露伴ルーヴルへ行く』の原作の冒頭において、露伴自身が名前の由来を話している。
 
「両親が付けてくれた名で―『露』ははかなきもの―『伴』はともにすごす

 

漫画は一例なのかもしれないが、そんな「はかなきもの」のためには何をも厭わない露伴という人物は、ルグランや仁左右衛門など様々な芸術家が叶えられなかった理想的な芸術家の一人なのではないかと思う。

また、彼が両親からもらったと言うそんな名前に想いを馳せるとき、やはりこの物語は大元から血脈の物語だったことを、更に強く感じられはしないだろうか。

 

最後に、公開記念舞台挨拶にて、「俳優として、この『はかないもの』と共に過ごしていきたい」と、この名前の由来を引用して高橋さんが挨拶をされたことも覚えておきたい。(とても素晴らしいのでぜひ全文をお読みください)

 

 

原作になかった奈々瀬の「何もかも全て忘れて」という台詞、本作で焼失した黒い絵や2016年に発見されたモネの絵(『睡蓮 柳の反映』なんと上野の国立西洋美術館に返還されていた…!)など、絵画のような作品というものが“忘れられる”ことと“存在が無い(とされる)こと”は同義であると言えるだろう。

だから奈々瀬は“忘れ”られることで呪縛の連鎖を止めたかったのだと思えるし、あの絵の存在は最早露伴の記憶だけに留まり生き続ける(泉も覚えてはいるが)という終わり方は、悲劇を繰り返さないことと、絵と対峙して映された露伴自身の過去を本人が受け入れて前に進むことの両者を叶えるために、必然的な幕引きだったと思う。

そして「作品」とは、この挨拶の内容が指すような映画も含まれるはずだ。消費されていくスピードの速さは、“忘れ”られる速度と捉えられるだろう。

 

昔から作品の大ファンである高橋一生という俳優が、岸辺露伴というキャラクターを見事に演じたというだけでなく、各々の生業を「はかなきもの」と認識しながら、ずっと伴ってそのために生きていると言っても過言ではないところに、まさに虚実を超えた運命を感じてしまうのだ。
 

『椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常』を終えたOTKより

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3/13 Bunkamura

4/15 名古屋

5/10 国際フォーラム

(11/18 ドルビーアトモス上映)

に行きました。ほとんど大楽観て書き殴りました。

関係者の皆様がご不快にならないように…とは思っておりますが、とち狂ったOTKの怪奇文なのでご笑覧いただけたらと思います…(記憶違いなところあればご指摘ください)

 

 

開演前

BGMはいつものクラシックシリーズ。Shazamにかけたら、プーランククインテットだったらしい。

開演直前に必ずかかるのが、『ベニスに死す』のアダージェット。林檎さんは本当にマーラーがお好きなんだな…と。

 

あの世の門

十字にスリットが入った黒幕がかかったまま歌が始まって、スリットから照明だけ見える形。

見えるものがほぼない分、聴覚への訴えが増すし、とにかく特に名古屋以降は最初から林檎さんの声の凄み・声量・響きが素晴らしくて驚く。*1ドスの効いた低い声マジで良…

あと光る十字しか視界に入らないので、なんだか厳かな雰囲気でここがあの世へのスタート感がすごい。今思うと、"諸行無常"というテーマはもう開演前のマーラーからここまでで始まっていたのだな…

 

我は梔子

…なんで今までこんなに格好いい曲スルーしてたんだろ…今回の実演で一番好きになった曲かも。

幕が上がってこんなに静かに始まる実演って珍しい気がする。イントロの林さんのピアノのシンプルな美しさが耳から身体全体に出汁みたいにじわじわ染みていくみたいだった。ヴァイオリンパートを佐藤さんのアコーディオンが担ってるのも凄くいい。

OTKの皆さんが拍手なくじいっと舞台に見入ってる集中力で満ちていた印象。"静謐"という言葉がまさに合うような。

 

「初めて身に染みてゐる 生きてゐると言ふこと 我は口、無しで良い 何も彼も持つてゐるから」

ここの歌詞が好きすぎて。"わたしたちは何も持っておらず不自由や理不尽の中に居るようで、実は生まれながらに全てを持っている(だから其処に生きているだけで良い)"みたいな、全肯定の人生讃歌みたいなメッセージが林檎さんのいろんな曲に脈々と流れているのが私は好き。

(半年経った上映会でも全く同じことを考えて観ていたので、本当に、私の人生の道標みたいな一節なんだろうな…)

 

今回の編成が、ピアノ(キーボード含む)・アコーディオン・ベース・ギター・ドラムなので、ギターだけ例外だしヴァイオリンはいないけど、本当に本場のタンゴを演奏するのと同じような編成なので、マジでここはミロンガ(タンゴの踊り場)ではないか…と錯覚する瞬間が何回もあって。タンゴ音楽が大好きな私には夢のような編成でもあった…

 

ちなみに林檎さんの衣装は、遠目だと現代風袈裟かな???って思ってたけど合ってるのかな(前の方で観たOTKいかがですか)

ピンクのおかっぱ丈ウェーブみたいな髪型(説明下手)で、白レースのヴェールで目隠しになってるんですけど、「見よこの眼を」「見よこの肌を」のとこでちゃんとヴェール上げて顔見せてくださるんですね〜〜〜好き

 

どん底まで

ここまで静かな感じだったから、ロックナンバーが来て客席盛り上がってるのがすごくわかる…名越さんのギターと石若さんのドラムも稼働しはじめて、当たり前なんですがめちゃくちゃ格好いいの

「一寸待った〜」で手を突き出して待ったポーズする林檎さんが可愛すぎ


カリソメ乙女

イントロのドラムだけで昇天できる。ここで林檎さん\イラッシャイマセ/してくださるし、脱ぐ(ベージュっぽいもこもこニット的なものを彼シャツ形式で着てる+ガーターでレッグウォーマーとめてる)し、ツアータイトルとSISのお二人が出てくるのでめちゃくちゃテンションが上がるし、当然OTKは手旗をブンブン振るのでとても綺麗。

今回の編成に金管楽器がないので、鍵盤隊がそこを担っていてすごく新鮮に聴こえるアレンジ。One time〜のところはテンション抑えめ色気ダダ漏れで心臓に悪くて好きです…

 

走れゎナンバー

もはや恒例(?)借り物の車で樹海行き(今回もちゃんと標識出てた)

何回も聴いてるけど、この曲踊れすぎない???って今更気付いたし、2番冒頭のところ鳥越さんのベースだけになるなんて聞いてない!何あれ格好良すぎ引き算の美学的なことってこういうことじゃん…

 

JL005便で(remix)

児玉監督の映像の美しさが爆発してて好きだったりする。何度か実演でやってる曲と思いますが、毎回波打つ海みたいな映像出ませんか?あれが曲の美しさと溶け合って毎回すごく好きなんです…

あとサビ前のとこで色がパーン!って爆発するとこ(伝われ)

 

ワインレッドの心(セトリ変更前)

死ぬほど好き。本家も良いけど、林檎さんバージョンのタンゴアレンジが最高すぎて何回聴いたかわからないので、そのまんまの編成で再現されて目頭が熱くなった…

ラスサビに向けて静かに燃やす心の鼓動が聴こえてくるような、秘めてるけど熱い想いを宿し続けている人だなって感じるところが好き、音楽でそれが伝わってくる(いつかこの曲で踊るのが私の夢)

聴けてよかったという気持ちとBunkamura当たってなかったら聴けてなかったのか危なかったという気持ちと…

(円盤には両バージョン入れてくださいませんか???→本当に入れてくださった!!!黒猫堂さんありがとうございます!欲を言えば上映会でも映画館の高音質で聴きたかった…)

 

青春の続き(セトリ変更後)

死ぬほど好き。どうしよう、なんで私が死ぬほど好きな曲同士でセトリ変えるんですか!!!円盤には両方…(2回目)

 

諸行無常から脱線しますけど、『宝飾時計』という舞台作品と『青春の続き』という楽曲に、多分日本一激重感情を抱いてるOTK(言い過ぎ)なので語っていい?いいよね?ありがとう

(舞台のネタバレしますよ)

 

そもそもなぜ激重感情なのかというと、私が主人公のゆりかとほぼ同い年女性だし、性格的には相手役の大小路にめっっちゃ近すぎるんです。

つまり、「絶対に手を離しちゃいけない相手」だってわかってるのに、一緒に居られない2人それぞれの中に私そのものに近いものを明確に見てしまったからです…

そのすれ違う様をめちゃくちゃ丁寧に、それでいて美しく、積み重ねていく不可逆な時間の尊さをこれでもかと見せてくる(だからこそタイトルが時計なんだと思う)

だから、私の分身がそれぞれ居て引き裂かれる気持ちだったし、物語そのものに対する解像度が高すぎてしんどいのに舞台としての完成度が素晴らしすぎて、人生ベストに入る作品だったんですよ私的には。

 

それでやっと『青春の続き』の話をするんですが、劇中で大小路が去った後にゆりかがラストで歌う曲なんですね。歌詞見れば、不在である誰かに話しかけてる曲だなってわかりますよね。

大小路とは子供の頃に出会っていて、一旦別離を挟んで出会い直すんですが、また離れることになる。でもそれまでの過去の時間が消えるというわけではなくて、「自分以外のために生きる幸せや思考」に基づいた人生をここから生きていくことになる。いわば"青春の続き"だったこれまでの時間を終わらせて、次の人生へと時計を進める決意をかためている…のが歌の前半だと思っています。

 

ただそれだけではなくて、やっぱり大小路とは一緒に居たかったのが彼女の本来の願いであって叶ってないわけで。大小路への想いが溢れて、どうしようもない運命へのやるせなさ、未熟さ、苛立ちもちゃんと残ってて、後半のその混沌としたところこそが魅力だと思う。綺麗に割り切れないのが人間だから。

特に「動物好きと自負する貴方〜」のところ、演じている高畑充希さんの技量が凄すぎるからだと思うけど、音源と舞台では全然違って。

もっとドス効いてて、迫力が凄くて、野生を感じた…本当に鳥肌立ちました。というか私2回観に行って、2回目が最前列!だったんですけど、あまりに気迫が凄かったのと、物語に自分が入り込みすぎてボロッボロに泣いてしまった…

 

はい!やっと!林檎さん版の話をするねOTKの皆さんお待たせしました

こちらは一言で言うと、どこか諦めを知った"大人の余裕"みがあって全然違って衝撃的だったんだよ…


最初の方のほわほわしたグロッケンみたいな音(語彙力)なんだったんだろう…?とにかく、アレンジがまず全然違うので雰囲気が違う。

原曲はカルテット+ピアノでクラシカルで重厚感のある編成で(舞台上の生演奏めちゃくちゃよかった感動した)、今回は弦パートないし、それこそ先述の「動物好き〜」のパートのとこなんてちょっとラテン風味を感じたし、林檎さんの歌い方もちょっと軽めな感じで、舞台とは正反対すぎてびっくりしました。

 

細かい事言うと、1番は高くて可愛らしい独特な林檎さんの声って感じで、2番はちょっとドス効きめで大人っぽくて(諦め、というワードはここで感じた)、一旦軽くなって、ラスサビの「嗚呼 貴方を掴んでいられたら〜」のところなんて本当に圧巻で、歌い方一つで一本の舞台、一人の女性の人生みたいな、物語ができてるんですよね。


他方で、あと15年経ったゆりかはこうなってるかも、という解釈も想像させられるんです。

大小路との別れから時間が経って、少し客観視していて、でもきっと沢山後悔や寂しさを繰り返しながら生きていたであろう背景も其処に見た気がしました。

 

あとラスサビ前(「己自身のため〜」)のとこ、先述の目隠しヴェール的なやつを手に持って見つめて歌っていらして、それも演出が細かすぎて凄い…って思った。立ち止まって、本音を絞り切るような詞とちゃんとリンクしてるんだよ…

 

記憶違いでなければ、『青春の続き』の最後の音を歪ませたまま次の『酒と下戸』に繋げるの途中からのアレンジのはず…めっちゃ驚いた…

 

酒と下戸

実演で初めて聴いた気が。サビ前、ドラムに合わせて歌入るとこでぴょんってジャンプして両足ガッって開いて正面向いて歌う仕草がかわいい(語彙力)

かと思うと、アウトロのとこでやっぱりドラムに合わせて腕を波打つような振りをしてて、あそこはめっちゃ美しいんですよ…流石バレエ経験者…

 

意識(remix)

本家も好きだけど大沢伸一さんの音楽が好きなので、こんなに雰囲気変わっても格好良くなるんだ⁈って思っちゃうし、気付くと身体が踊ってしまう中毒性。始まったとこで歓声上がってたからやはり人気曲なんですね。

あと黒猫DAOKOさんがかわいいし、脇で踊るSISさんも猫仕様でめっちゃ良だし、でも一番はサビで死ぬほどぴょんぴょんしながらベースゴリゴリ弾いてる鳥越さん最高すぎない???可愛いと格好いいの洪水で死ぬ…

 

神様、仏様

諸行無常と言えばこれは外せないよね。繰り返すARE(2023年の関西人にしか伝わらん)のネオンサイン格好いい。林檎さんは赤と白の長い羽織着て少し和風な感じに。

サビ前の一瞬ジャジーなアレンジになるとこ好き。そこからのサビでOTKの手旗めっちゃ揃ってて気持ち良すぎる…私はMIKIKO先生の振り付けも好きなので、振りに合わせてノるのも楽しいよ…

 

TOKYO

『神様、仏様』から途切れなく入るその時点でもう優勝です(そもそもMVの東京タワーから突入しますし🗼)

とにかく林さんピアノ無双すぎて…!!!5拍子もなんのその、多分原曲より気持ちテンポ速いくらいで弾いてない?ってくらいの演奏、もうピアノの音の粒だけで洪水みたい、圧倒的

それに負けないベース、ドラム、歌。シンプルなものこそ強靭で美しい

 

私のエターナル人生のBGMというかもう表も裏も清濁も全て飲み込んでの"人生"だし"私"なので、歌詞をちゃんと見ると情緒がおかしくなる…なんでこんな暗くて澱んだ人間の一面すらちゃんと目を背けず掬い上げられるんだろう

 

「ずっとひとりならーーーーー(ギリギリまでのばす)長いわ」って伸ばして歌ってたのが珍しかったし、横向きにしゃがみ込んで歌っていたのも珍しくて、この曲を体現してるみたいで印象的だった。

 

天国へようこそ

イントロがグロッケン?とアコーディオンの組み合わせで、一寸怖いファンタジーみたいな雰囲気出てて凄く良かった。林檎さんは左右半分ずつで黒と白のロングガウン着用。

最後「さらばだ!」でスモークの中に消えて、後ろのスクリーンに昇天していく姿が見える。これもスモーク越しに見えるので、なんかファンタスマゴリア的な不気味さがあって、まさに"天国へようこそ"

 

鶏と蛇と豚

衣装チェンジムービータイム。別名AYAさん無双タイム。OTKに聞きたいんですが、あなたのAYAさんはどこから?(風邪薬じゃない)

というか鶏と蛇と豚のどれが好きですかって話。私はサビで舌出す蛇派です🐍

MVの映像から少し差し代わってて、受精卵の映像が入ってたと思うんですが、私達の持つ"原罪"のような、罪深さ欲深さ(まさに三毒なんですが)が際立つな〜と思いながら観てた。

 

幸先坂/同じ夜

セトリ変わったところ2箇所目。私の知人は幸先坂が好きすぎたけど、同じ夜の弾き語りも良すぎて泣いたって仰ってて、めっっっちゃわかる…と思ったので、黒猫堂さん円盤には両方入れてくださいませんか???(n回目)

林檎さんのピアノ弾き語りは、実は私初めて生で観た気がするので、すごい…素敵だ…お歌もピアノも上手すぎだよ…って感動しちゃいました。不協和音ではじまり、不協和音で終わるところが好き。

ピアノ越しに覗く金髪ショートがお似合いすぎて、双眼鏡でガン見してしまった…


人生は夢だらけ

TLで「椎名林檎からでしか摂取できない栄養素がある」って書かれてる方がいらしたけどさ、

自由〜〜〜!の絶唱とラストで突き上げる拳こそそれだよ、それ摂取するためにOTKは生きている…(マジで毎回実演行くたび思ってます)

わたしたちの人生を彩って、支えてくださってありがとう


あとお衣装、最初ボルドーっぽい色で光沢のある布の膝丈ワンピ(スカート部分が贅沢に布多めでふわっとしたライン)かと思ったら、チャンピオンベルトにグローブなのでボクシングスタイルなのね。正面から見てやっと気づいた。襟のとこにいっぱい勲章みたいなの付けてたから強い選手ってことなのかな…?*2

 

仏だけ徒歩

天才タンゴアレンジ…!!!えっ不思議なシタール風ギターがふわふわ乗ってる感じののこの曲を⁈って感じ

最初アコーディオンだけだし、突然のみんな大好き忘るまじおじさん*3の電子加工済みお声で一瞬なんだこの曲…ってキョトン…ってしちゃった

これマジで大発明すぎるアレンジだと思うので音源化しないかな🤔黒猫堂さーん(事務所への要望とにかく言うOTK)

 

私は猫の目 (新曲)

Bambiちゃん!可愛すぎる…多分東京楽でお見かけしたんだけど、細すぎてびっくりしたあの身体であんなに格好良く踊るのすごい…

この曲の詞は「江戸弁のねこ口調」(ご本人MC)らしい。例えば「尚」がにゃーおになってたり愛らしさ満点…


公然の秘密

SISさまのおダンスがちゃんとAYAさんテイストを残してるのを感じるし、ラストのとこ林檎さん頑張ってLockっぽく踊ってたしビシッ!って敬礼してたし可愛いかよ〜〜〜

金管なくてもちゃんとエレキとエレピの電子感とうねうねベースと締めるドラムで全然寂しくないというか、原曲と変わらず派手に聴こえるの地味にすごいことでは?と思って聴いてた

 

あと今回の実演に関係ないけど、もうn番煎じってくらい言ってるけどOTKなのでしつこくまた言いますね

わたし時効警察のOTKだし、三日月くんの中の方のガチOTKなので、この曲の三日月→霧山への恋心の解像度が高すぎて、本当に林檎さん凄いな⁈って思ってるんですけど

…マジでなんで三日月くんが歌うの実現しなかった…⁈そのために作ったって仰ってましたよね⁈このクレームどこに言えばいいのテレ朝?黒猫堂さん??Breathさん???

せめていつか提供が叶いますようにガチで願ってます

 

女の子は誰でも

照明暗め、窓枠とドアのセット。窓枠から月光が差し込んでるみたいな照明が綺麗。室内設定っぽくて椅子とクッションも出てきます。

またまた林さんピアノを堪能するお時間…この曲のピアノだけでチケット代の元が取れてしまう…

イントロだけでもういい雰囲気のバーに来たのかな?って感じの超絶素敵なピアノが流れてきて、でも実はその間に林檎さんが超絶早着替えしてパジャマスタイルに変わってることに、私は大楽にてやっと気づきましたわ…

アイスミント色のシルクみたいなパジャマ、クッッッソ可愛かったのであれグッズ化して!って声ちらほら見かけたけど、本当にあれ売れると思う私は絶対買う

(映像できちんと確認したら、やっぱりクッソ可愛かった。特に襟から胸元にかけての装飾めちゃくちゃ綺麗…流石keisuke kanda)


そしてそのパジャマスタイルでクッション抱いて、間奏では口笛吹いた!と思ったら即切り替えて格好良く歌い上げて、でも後半の英詞のとこはなんか知らないけどマイク持って歌いながら、上手下手にズンズン歩いてぴょんぴょんしてた(うまく言えないけどコミカルに移動してた)林檎さんが超絶可愛くてハカハカするし死人が出てると思うんですけど大丈夫ですか???

 

Eternal Flame (cover)

私の学生時代の思い出の曲なので、まさか林檎さんのお声と彼奴等の演奏で聴くことができるなんて夢にも思わなくて…すっごいサプライズだったし嬉しかった…こんなこともあるから人生は夢だらけ

選曲の理由はなんだろうかとずっと考えたんですが、『女の子は誰でも』と合わせて女の子の恋心パートって感じなのかな?"Am I only dreaming?"だし、パジャマ着て歌うならそうよね

 

原曲(the bangles)の甘い感じの歌声も好きだけど、林檎さんの独特の声色だと甘やかだけどすっきりしてて力強さもあって。最後の"an eternal flame〜"って伸ばすところ、凄く格好良かった。

音楽面は私は原曲より断然今回の方が好き。ピアノだけから、一番で少しずつ楽器が増えて盛り上がっていってバンドサウンドで重なっていく感じが良かった。これは好みの問題だけど。

 

あと名古屋で思ったんですが、最初映像ついてなかったですよね?林檎色の紙飛行機が部屋の中から外へ飛んでいくやつ。

今回の名物の折り紙紙飛行機、どんどん改良されてたようですが少なくともBunkamuraと名古屋の時は全然飛ばせてなくて、名古屋ではすぐヒュンって落ちて最前ドセンの方が拾ってて面白かったw周りの人もちょっと笑ってたw(毎回飛距離短かったみたいですね⁈笑)

でも大楽は割と綺麗な弧を描いて飛んでたから、ちょっと感動しちゃった笑。Twitterに飛行機の写真いくつか上がってて、形も改良されてたみたいだし、中に毎回違うメッセージ書かれてたらしくてそれは本当に感動した…

 

いろはにほへと

Eternal Flameのアウトロのとこで実は超絶早着替えされていることをやっぱり大楽で気づいたんですけど、今回の衣装で一番これが好きだった!

ここでにるゔぁーなに着いて天女様にお会いできたという解釈でよろしいですか?めちゃくちゃ美の暴力なんだが???

 

お衣装見て一発でこれkeisuke kandaでは?って確信したし、実際エンドロールでそうだったってわかったんですけどね、胸元のレース?の縁取りの模様みたいなのがめっちゃ"っぽい"と思ったんですよね。本当に服のテイストが好きすぎる…

言葉で説明は難しいけど、超絶短いミニワンピみたいな感じかな…ガーターしてたはずだし、あとロング羽織も同色同素材っぽい感じ

黒髪前髪ありウィッグ(NIPPONの時と一緒?)に、お正月に飾る派手な熊手載せててびっくりした…咄嗟に、盛り盛りのヘアに模型の船を乗せてたマリーアントワネット思い出したよ…(しかも熊手にネコチャン居たらしいのに全然気づかなかったよ…)

 

曲の話全然してなかったけど、この曲は林檎さんのタンバリン捌きを見るのが楽しいなってことに気付きました

 

命の息吹き

…懺悔すると、初回で唯一わかんなかったこの曲…提供曲見逃してたー!

しかし、本当にツアー通してめちゃくちゃ好きになったんです。歌詞とサウンドの美しさ軽やかさ色鮮やかさが、耳から聴いて、目で見えて匂い立つみたいな錯覚覚えるようになったもの

フォロイーさんでこの曲聴いててじわじわ涙出た、「とにかく愛させてほしい、注がせてほしい歌」って仰ってて、一気に解像度が上がった…名曲じゃん…

 

いとをかし

絶対プリンが食べたくなっちゃう🍮林さんのしっとりピアノと昔の文語体って感じの歌詞をしみじみ味わうタイム…

おじゃる丸が大人になったらきっとこんなふうに思うんだろうな〜って歌だと思ってるし、これを幼少から聴いて育つ今のお子たち英才教育すぎるな

 

長く短い祭

そりゃやるよね!サビで林檎さんに手旗の振り方レクチャーされながらブンブンしないと実演が終わらないのですよ!!!

あと忘るまじおじさんの出番あってよかったよ!!!(すごい安心感)

やっぱり金管がないのにすごい普段よりラテン感を感じたのですが、多分ドラムとピアノかな、凄くリズムを感じた

 

緑酒

何もかも元通りになったわけじゃないけれど、やはりこの曲を聴いてこみ上げるものがあった人が多かったんじゃないだろうか。

私は運良く3年前の閏日にフォーラムに居たので、大楽はまた同じ場所でこの曲をちゃんと生で聴くことができて、感慨深い瞬間でした。

 

あと今回のセトリで言うと『仏だけ徒歩』と『緑酒』って、林檎さんと同世代の氷河期世代の方々からしたら凄く応援歌ですよね…その世代の愛好家の方がどういう風に聴いてらっしゃるのか興味が湧いてます(私はゆとり世代です…)

そしてMVが大好きなので、最後のスクリーンの桜吹雪の美しさで更にテンションが上がった…(いつかあの料亭で緑酒ごっこするのが夢)

 

NIPPON

やっぱりこの曲もやらないとですね。『緑酒』からそのまま途切れなく突入するし、銀テ舞うしラストに相応しい華やかさ!OTKの手旗振りスキルも最高潮になるし、間奏で林檎さんに「もっとー!」って煽られるから頑張っちゃうあの空間がとっても好き

そもそも『緑酒』の途中で、あの黄色いギターを装備してるのでなんとなくわかるんですが、間奏で林檎さんと鳥越さんが前に出てきてガーって弾くのめちゃくちゃ格好いいし、持ち場でそのまま弾いてる名越さんも最高だし、合法でキマれてしまうよ

 

アンコール

外はねウィッグに、膝丈タイトスカート(体の横側で編み上げになってる)と同布のジャケット、中はツアーTシャツにやはり同布ポリスハット的なやつ!薄緑みたいな色でかわいい!!!

というかあの布多分ジャージー生地よね。やはりkeisuke kandaじゃーんって思った


大楽以外はMC少なめで、でも「またすぐにね」ってそっと言ってくださったのがうれしかった、いつかわからなくてもそういう約束ができる日常の尊さをわたしたちはもう知ってるからね*4

 

大楽はすごくMC話されてて、全文ちゃんとメモしてる人TLにいらしたらから探してほしいのですが(笑)、すごく面白かったのが

🍎「飲まなきゃやってられない…飲んでもやってられないというような日々をお過ごしだったかなと想像して…」

お客さんの誰か「ほんとそう!」

🍎「ほんとそう!笑」(客席爆笑)

この流れが最高だったし、だからこそ3年前の閏日からの本日の『緑酒』の感慨深さだよな…と思わずにいられなかった。

美味しいものにこの後ありついて、健康第一でまたお目にかかりましょう、って仰ってたから速攻ご飯食べに行ったし、OTKは健やかに生きましょうね!

 

母国情緒

曲そのものもだしポリスお姉さんの可愛さ大爆発すぎて…間奏で長いホイッスル?をびよーんびよーんって吹いてるのが愛らしすぎるし、アンコールだからか正面向いてOTKめっちゃ見てくださるし、ホイッスルをマーチングのバトンみたいに振りながら歌ってるの良…もう国宝、いや世界遺産にしたい…

 

ありあまる富

「ギター 名越由紀夫」のご紹介からのあのイントロとMVの映像で泣きそうになる(実際泣いてる人いっぱいいらした)

スクリーンで改めて観て、こんなに美しかったんだ、ラストの水飛沫や色ガラスのきらめきが眩しくて、浮遊するひとつひとつの物たちや背景の空の青さや、なんか細かいことなんだけど、私たちの身の回りにある世界を丁寧になぞって確認して慈しむ感覚になった

 

その映像に重なるこの曲までの旅路が、期待したり絶望したり楽しかったり悲しかったり何かを得たり失ったり生きたり死んだりして、それで最後が「ありあまる富」なの、

世界がまだ不幸だとしても、もうあなたも私も生きてるだけですべて備わっているし、ただ其処に居るだけで良いんだってことじゃないですか、諸行無常のゴールってこれなんだなって…こんなやさしい終わり方ある…?

 

エンドロール

名越さんのギターの歪みの余韻に浸る中、SISのお二人が「諸行無常」のカセットをファミコンにセットすると…のドット絵エンディングに、ピコピコゲーミング『シドと白昼夢』めっちゃ可愛かったな!!!鯵野滑郎さん天才すぎ

各地でちゃんと背景のロケーション変えてる芸の細かさとか、メンバー紹介も担当楽器やパートに合わせてて個性的で素敵だった…

個人的にはくるくるまわる鶏と蛇と豚ちゃんのドット絵が可愛すぎてグッズにして欲しかったな…ぬいぐるみが欲しい…

 

"OTKときゃつらだけのもの"というパワーワードを胸に、にちじょうをがんばろうとおもいました


おわり

*1:ツアー前半は音源だったらしい。

*2:今思うと、このワンピのラインも『宝飾時計』のゆりかのセーラーワンピと似てて、その時点でkeisuke kandaっぽいな〜と思ったり

*3:バンドメンバーでなくて残念だけどとりあえず生存確認できて良かった

*4:現実問題、今年はアレですよね博的ななにか期待していいんですよね???→無かった〜しかし来年は閏年です🥺うるうるうるう

【編集中】回顧 2022

【もくじ】

☆美術・展示・建築
☆音楽
☆映画
☆演劇・舞踊
☆テレビドラマ

(コメント編集中です、また更新します)

 

☆美術・展示・建築

印象派・光の系譜 @三菱一号館

♡上野リチ展@三菱一号館

奇想のモード展@庭美

島薗邸 和館最終公開

メトロポリタン美術館展@新美

宝石展@科博

大正ロマン×百段階段

Crypte archéologique de l'île de la Cité

Foundation Louis Vuitton

Grande Mosquée de Paris

♡Cinémathèque Française

♡Palais Galliera

Musée Marmottan Monet

Le Corbusier Maison La Roche

Musée de l’Orangerie

♡Musée des Arts Décoratifs

Fondation Claude Monet

♡Musée d’Orsay

Musée des Arts Décoratifs

Bourse de Commerce

Musée Yves Saint Laurent Paris

Musée du Louvre

♡La Galerie Dior

Cité de l'architecture et du patrimoine

Chapelle Notre-Dame-de-la-Médaille

Miraculeuse

Sainte-Chapelle

サンエックス

メロンパン号ラストキャラバン

ガブリエル・シャネル展@三菱一号館

オリバーな犬展

♡異性装の日本史

アリス展

のだめカンタービレ

おいしいボタニカル・アート

アーツ・アンド・クラフツとデザイン

 

 

☆音楽

グループ魂 一年ぶりの再結成!中野サンプラザ

Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios

宴会 鳳凰

Bjork Orchestral @La Seine Musicale, Paris

NiziU Light it Up (東京初日)

THE PARALLEL ウタウヒツジ

♡ (This Is The)Base Ball Bear part.3

♡NiziU Burn it Up (東京ドーム2days)

スガダイロー 2020レコ発ライブ

 

 

☆映画

Promising Young Woman

Never Rarely Sometimes Always (17歳の瞳に映る世界)

コンフィデンスマンJP 英雄編

♡Ich bin dein Mensch (アイム・ユア・マン)

♡CODA

WEST SIDE STORY

♡Last Night in Soho

シネマ歌舞伎 桜姫東文章 上下

シン・ウルトラマン

Nightmare Alley

ちょっと思い出しただけ

もののけ姫

xxxHOLiC

In the Heights

Saint Frances

犬王

Spencer

帰らない日曜日(Mothering Sunday)

わたしは最悪。(The Worst Person In The World)

♡はい、泳げません

ある男

♡そばかす

 

 

☆演劇・舞踊

SLAPSTICKS

ラ・マンチャの男 (中止前の実質千秋楽)

シェイクスピア (配信)

夜来香ラプソディ

命、ギガ長スW (長ス組)

今夜、ロマンス劇場で (東京宝塚劇場千秋楽ライビュ)

もはやしずか

貧乏物語

お勢、断行

ドライブインカリフォルニア

♡Giselle @Opéra Garnier, Paris

♡2020 ニーゼロニーゼロ (配信・東京ラスト3公演・福岡全3公演・大阪ラスト4公演)

世界は笑う

♡夜の女たち

VAMP SHOW

♡ジャージーボーイズ (Team Green&Black)

阿修羅のごとく

オポルトシュタット

クランク・イン!

ルードヴィヒ

しびれ雲

♡ツダマンの世界

アナと雪の女王

どうやらビターソウル

ショウ・マスト・ゴーオン

 

 

☆テレビドラマ

♡カムカムエヴリバディ

♡必殺仕事人

♡幕末相棒伝

♡東京、愛だの、恋だの

婚活探偵

DCU

♡ミステリと言う勿れ

♡恋せぬふたり

私の正しいお兄ちゃん

ファイトソング

#居酒屋新幹線

ムチャブリ!わたしが社長になるなんて

となりのチカラ

ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇

ケイ×ヤク-あぶない相棒-

あせとせっけん

♡妻、小学生になる。

しもべえ

愛しい嘘〜優しい闇〜

シジュウカラ

もしも、イケメンだけの高校があったら

鹿楓堂よついろ日和

津田梅子 〜お札になった留学生〜

僕もアイツも新郎です。

ペットにドはまりして、会社辞めました

旅屋おかえり 秋田編

卒業タイムリミット

元彼の遺言状

持続可能な恋ですか?

♡正直不動産

♡村井の恋

明日、私は誰かのカノジョ

悪女 〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜

ナンバMG5

ソロ活女子のススメ2

未来への10カウント

やんごとなき一族

輪るピングドラム

インビジブル

先生のお取り寄せ

ずん喫茶

17才の帝国

妖怪シェアハウス -帰ってきたん怪-

俺の可愛いはもうすぐ消費期限⁉︎

マイファミリー

カナカナ

空白を満たしなさい

星新一の不思議な不思議な短編ドラマ

監察の一条さん

競争の番人

♡魔法のリノベ

プリズム

ユニコーンに乗って

ロマンス暴風域

家庭教師のトラコ

テッパチ!

みなと商事コインランドリー

六本木クラス

純愛ディソナンス

♡石子と羽男

NICE FLIGHT!

絶飯ロード2

♡雪女と蟹を食う

♡初恋の悪魔

個人差あります

オールドルーキー

年下彼氏

彼女、お借りします

名建築で昼食を 大阪編

少年のアビス

高良くんと天城くん

あなたのブツが、ここに

オリバーな犬

階段下のゴッホ

北欧こじらせ日記

特集ドラマ アイドル

一橋桐子の犯罪日記

つまらない住宅地のすべての家

アトムの童

推しが武道館いってくれたら死ぬ

サワコ〜それは、果てなき復讐

PICU 小児集中治療室

♡エルピス

-50kgのシンデレラ

壁サー同人作家の猫屋敷くんは承認欲求をこじらせている→傲&慢慢

君の花になる

ファーストペンギン!

夫婦円満レシピ

World on Fire

ザ・トラベルナース

♡silent

恋と弾丸

永遠の昨日

クロサギ

最初はパー

♡最果てから、徒歩5分

ボーイフレンド降臨!

ジャパニーズスタイル

舞い上がれ!

作りたい女と食べたい女

♡鎌倉殿の13人

引きこもり先生 シーズン2

『ツダマンの世界』

12/3(土)ソワレ 観劇

めっっっちゃネタバレしてます↓

 

 

 

 

・一言で言うと「酒!クスリ!セックス!」みたいな、何度も「おいテメェそれはどうなんだ(自主規制)」みたいなシーンのオンパレードだけど、出てくる人物達の関係性がほとんどぜんぶ母子・師弟・夫妻などの歪んだ共依存が散りばめられていてきわめて良…な話。


・とりあえず冒頭のよくわからん占い巫女みたいなの、途中まで阿部さんじゃんって気付かなかったし、ツダマンになってからもずっと思ってたけど、胡散臭さとか絶妙な間とか、「なんかこの人にしかできないよな」と思わせる何かがとにかく可笑しいんだよね

まあそれを言ったら猿時さんなんて出てきただけで笑えるんだけどw


・そもそもツダマンの生い立ちやばいよね、「そりゃ女にトラウマしか抱かないだろうね」って環境よね

実母の乳やわ歌からの不貞→女を抱く時おっぱいめっちゃ強く揉むので痛いとか

継母の物差し調教やら反省文やら結局彼女が狂ったエピソード→彼女に似た女に興奮する性癖+死ぬまで逃れられない文学への執着とか

結局男たち(勿論全員ではないと思いますが)が、根っからクッッッソすぎるしクソダセえんだけど、女たちに影響を受けていたり、(後述しますが)数さんや女中さんの顛末とか見てると女がつよつよで自分の力で生き抜いていたりする、そのコントラストがエグいんだよ…


・まさか松尾さんの舞台に出ると思ってなかったよ笠松さん…歌唱力を盛大に無駄遣いしていて、あのアホみたいな人たちの物語の中で素敵に歌われるので、より物語の滑稽さが増すという…


・クソボンボン役の間宮くん、あれは死人が出るんだろ〜な〜と思って観てた。生ける太宰治

崖みたいな、ギリシャ彫刻みたいな顔面で、クソ甘人生舐め腐った発言と死ぬ死ぬ詐欺のオンパレードなので、こいつ絶対賞取らないし死なないんだろうな〜と思ってたら最後死んでびっくりだよ

でも終盤、自分の賞欲しさに数さんを狂児へ売るところは文豪になり得そうな覚醒した感じがあって良かったし、それを黙認するツダマンも狂ってるし、ゾクゾクするとか言ってる狂児は普通に狂ってるし、押すなよ!って言われたら人間押すもんなんなんだよ!!!みんな狂ってんな!!!!!


・各自の好きな共依存があると思うのですが、私はツダマンと数さん夫妻が好きだったな…数さんはめちゃくちゃ愛に飢えてる人で、ツダマンが戦地から送ってきた手紙の行数を葉蔵と比べちゃうようなとこがありつつあのラストですよ…(羊さんめっちゃ格好良かったな…)

数さんに一生勝てない、それでも別れられないように仕立て上げられたツダマン、めちゃくちゃダサすぎて最高だったし、たぶん数さんこれからもめちゃくちゃ辛いし修羅の道すぎるんだけど、それでも嘘でも良いから愛してるとか好きだとか言われたい気持ちもわかるし、それで延びる命があるなら儲けモンでは???って気さえした

この2人はどーやっても、誰も知らない(文字通り行方くらますし)地獄を2人で行くしかないところが最高


・あとラストで忘れてはならないのがこの物語はあの女中さんが書いた話だということで、狂言回しが江口さんなのもめちゃくちゃ良いんだよな…そのオチは最後まで明かされないけど、すごく納得できて。

というのも、金のために搾取されていくと見せかけて、最後に全部掻っ攫っていく(清書を行うことで小説家としての素質を培い、ついでに子も身籠っている)の、何も無い彼女のような人こそ実は最強で、何も無いから後は得ていくしかないみたいな生き方しそうだなって思えるんですよ。そもそもヤバヤバな登場人物たちに都度ツッコミ入れてくの、江口さんのキレキレさにめちゃくちゃ合っているしネイティブ関西弁聞いてて気持ち良い。


・あと、江口さんが『ツダマン〜』の前に出てらした『夜の女たち』での役柄とかなり重なるイメージでした。同じ時代だし、生きるためにどうしようも無かった女たちを続けて演じられていたので。でも抱く印象は全然違う人物なので、そこがまた面白かった。

 


・女性陣の衣装がとにかく素敵だったのでそれだけでも観る価値があるよ

和装!!!知ってたけど良!!!!!(立場によって派手さとか柄とか違うけどそれもまた良く)

洋装も良!!!

…チャイナドレスとか聞いてない!!!!!(ほんとにびっくりしたし美の暴力だった)

 

・松尾さんの舞台いくつか観てきてあんまり合わないな〜と思うこともあるんだけど(おそらく合う合わないがめちゃくちゃあると思う)、今回凄く良かった…3時間強が一瞬の面白さ。

現代演劇で3時間超えの鑑賞に耐えられる舞台って、たぶん松尾さんとケラさんくらいじゃない???

人間の醜さを毒っ気たっぷりに描きつつ、最終的に「でも人間って憎めないですよね」と思わせる方だと改めて思った。今年は『ドライブインカリフォルニア』も観てそちらも凄くよかったので、良い一年だったり

 

sherry5honey7jouer.hatenablog.com

 


・昨年上演の松尾さんの『シブヤデアイマショウ』を思い出した。というのも、戦時下の芸術家というのも大きな時代のうねりに殺されかけるじゃないですか。ツダマンは戦地に送られるし、度々月田川賞の選考が無くなるなんて最たるところ。あとは左派演劇家たちの末路もわかりやすいですよね。

そういう"不要不急"の文化に対する仕打ち、時代や要因は違えど、演劇人として松尾さんが本気で怒ってるということがよく伝わる点で、『ツダマンの世界』は『シブヤデアイマショウ』と兄弟みたいな作品だと思います。実在の人物をモデルにしたフィクションと、時事ネタも織り交ぜた歌謡ショーという形は違えど、両方観られて良かったなとめちゃくちゃ思いました。

 

 

・そして、たぶん「書かずにはいられない」という点で、どこかツダマンとか葉蔵は松尾さんなんじゃなかろうか。

『ドライブイン カリフォルニア』

5/27ソワレ(初日)、6/4マチネ、6/5マチネ観劇

 

※戯曲は読んでいないため、観劇の記憶のみを辿ってます。間違いがあれば申し訳ないです。ご指摘いただけると助かります。

※どーしても推しなので、麻生さん演じるマリエの視点寄りで観ているというバイアスかかりまくりです。

 

 

・マリエをめぐる三角関係が不思議だし、第三者として側から見てる分にはすごく面白かったです。

要はアキオと若松ですね。


彼女と元夫の歪な関係(とは言え列車でのエピソードを踏まえると、どちらかが死ぬ運命と解りながら番にならざるを得なかったのも凄く納得できる)もなかなかのものですが、

アキオと若松はたぶん、一生マリエに振り回されながら生きていくんだろうなと想像できるし、後述しますが、それがマリエの今後の人生にとっても実は希望となるのだろうなと思いました。


観ていればそれは様々な形でわかると思うのですが、演出とか目に見える形で対峙させている構図が、個人的には興味深かったです。

既に冒頭で自作の曲を電話に吹き込んでいるマリエを挟みながら、若松とアキオは上手と下手側で対峙しているんですよね。若松はスカウトのため名刺を差し出し、アキオはスプーンに掬った蜂蜜をマリエに差し出しながら。

 


・というか兄妹とは言え、スプーン直に差し出して舐めさせるの、なんか観ては行けないものを観ている禁忌さを感じたのは私だけでしょうか…

これに関してもう少し突っ込むと、ラストの方でマリエがアキオに「最後(=最期と同義と考えてよいと思う)まで付き合ってよね」みたいなことを平然と言えてしまう関係性、やっぱり若松とか元夫とかにも入り込めないこの二人の絶対的な関係を感じさせるんだよな…と。

この文脈で観ちゃうと、「蜂蜜を舐めさせる」という行為=マリエが女王蜂みたいなイメージを想起させるように思いました。絶対服従と言うか、アキオは絶対嫌いにならないし、なんやかんや血を分け家の秘密を分かち合い、更に恋慕を滲ませたらそりゃ最強だろうよ…こわ…

 

 

・真っ先に竹の花が咲いた(かもしれない)に気づくのはマリア、ほぼ同時に窓辺に寄っていくのは若松とエミコで、我孫子家の面々はその後に遅れて目にするシーン。考えすぎかもしれないけど、このど田舎の小さなドライブインの家の中で起きる血の争えなさの反復(大辻息子ベビーが隔世遺伝とかもあるけどw)から外れている人たちが、竹の花というほぼ"フィクション"みたいな奇跡を見つけるように見えます(マリエの手品という体であっても)。


よく「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」と言いますが、その変奏みたいだなと思いました。

つまり、自分に近すぎる血筋とか運命とかはどうしても悲劇的に見がちで、第三者の方が引きで見ていて責任を伴わない分、希望になり得るような物事を見つけやすいのかもしれない。

もしこの集団幻覚かもしれないけど奇跡が起きなかったら、アキオがマリエとユキヲの代わりに暴れて地下に潜っていたかもしれないと思うと、悲劇が繰り返されなくて良かったな…と安心しました。

 


・『山なんか見たくない』(マリエの持ち曲たちマジで謎w)の衣装のマリエがめちゃくちゃ美しいのですが、大辻ベビーを抱いてセンターに立つとまるで聖母のような出立ちだし、そこからあの祠(でしたっけ?)の封印が解かれていくの、偶然じゃないと思うんです…うまく言えないけど…

 


・途中で開眼(?)するアキオ、言葉に勝った時の表現が凄く素敵でしたね…自分が触れた波が何かを残すみたいな台詞(既に忘れた)


クリコが「バカになりたい」って吐露するのも自分のことのように感じましたね…

彼女は文字通りたぶん賢い人だし、そのせいで若松の魂胆を知りながら一緒に居る…という点でも理解できるし、

もっと全体的な解釈をするならば、自殺するのはバカで、だから死ぬくらいならバカになればいいし、バカって身体に書き合って生きてるくらいの方がいいよね、っていうのを本当に目の前で繰り広げて見せられたの、クリコ含め観客である私も救われる気分でした…これも松尾さんの世界への解釈のような感じがしました。


あと「世界は見えるところまでしかない」って台詞とか、花を咲かせる手品とか、めちゃくちゃ『キレイ』の世界観だし、つまりそれは松尾さんの世界なんだよな…と。

 


・余談ですが、今回のMVP・東野良平さん演じるキレッキレのヤマグチ(一言話したり、動いたりするだけで面白すぎるwww)が、復讐しに来た時に、暴れながら「クズは病気だからそのままでいいんだ」みたいなことを吐いてた気がするのですが、それも上記の「バカになりたい」の価値観と根本は同じ気がしました。それくらいの気持ちで生きられたらいいよな…

 


・あとMVPに挙げたいのは川上友里さんのマリア!めちゃくちゃ良かった!フラれて秒で「ウワァァァ〜」って叫びながら退場したり、全力でマリエの歌を歌ったり踊ったり、

自分のブスさとか不器用さをコンプレックスに持ちながら、最後の集団幻覚での「キレイになりました」で、もうめちゃくちゃ愛おしかった!マリアちゃんはキレイだしかわいい!です!今度お店に遊びに行きたいよー

川上さんの舞台も観たくなりました。

 

 

 

・松尾さんの作品はぼちぼち観てるけれど、あんまりしっくり来なかった私の中で、

本作は凄く印象に残ったし、言ってしまえばマリエの死生観がバチバチに自分と一致したからです。

 

誰かが死んだ時に「死ぬのは私なのに」と思ってしまうこと

風や電車の音が「死んでいい、死んでいい」と聞こえること

マリエが希死念慮と共になんやかんや身内を喪いながら自分は死ねずに生き永らえてしまうところ、他人事には思えなくて苦しいくらいだった。


理由が明確にあるわけではないけれど、自分の生存理由や価値について何の根拠もないまま宙ぶらりんに生き延びていくのってしんどくないですか?そういうこと考えなくても生きられる人は生きられるんだろうけど。


でもそういう人生に解決方法も突破口も無いんですよね、だってそれが人生だから。

そのどうしようもない生きる悲しみ苦しみのようなものをそのまま描きながら、それと共存していく様に着地して見せてくれるところが、すごく松尾さんの眼差しの確かさのように感じられて、私にはむしろ希望でした。


多分これからもマリエは死にたくなるし、その死にたさは誰にも止められないけど、アキオや若松やら周囲の人たちに心配されたり支えられたりしながら、何とか生きていくんだろうな。すごく現実的だけど、それこそが人生なのだと。

 


・ラストシーン!喪服サングラスに酒瓶と煙草持たせたの誰!(松尾さんだけども)良〜!!!

あそーさん、そういう役あんまり見たことないからめっちゃ良かったというか色気とやさぐれ感のバランスが良かったし、推しにそんなんされたら惚れるわ。

 


・あそーさん大好きだけど、初演再演の秋山さんの舞台も結構観ていて、本当に舞台に立つべくして立っていらっしゃると毎回感じるすごく好きな役者さんなので、比較して観たかったな…

そもそも秋山さんの役をあそーさんにキャスティング振ったの凄いなとは思う…イメージ全然違うけど、松尾さんの采配なのかな?

 


・あと謎のかけ声(?)「シャランラー⭐︎」を女性陣総出でキメるとこめちゃくちゃ好きなので、流行ってほしい…笑

【仮】回顧2021

※多忙すぎて各コメントまで書けませんでした

(…誰にも求められてないけど私は書きたいしまとめたいし好きなことで狂ってたいんだよ!!!)

年始にご期待ください。

 

※こんなご時世なので配信も含みます。

 

※特に好きなものは♡つけてます

 

 

☆美術・展示・建築

MIU404衣装展

KING&QUEEN展 @上野の森

日本のたてもの @科博

石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか @現美

石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか @銀座ggg

ロスト・イン・パンデミック @早稲田演博

ファッションインジャパン @新美

マン・レイと女性たち @Bunkamura

ルネ・ラリック リミックス @庭美

♡サーリネンとフィンランドの美しい建築展 @パナソニック汐留

森に棲む服 @そごう横浜

♡モダン建築の京都 @京都市京セラ美術館

♡秋の文化財公開(伝道院、長楽館、祇園閣、旧三井家下鴨別邸)

 

☆ライブ

LOVE PSYCHEDELICO "LIVE THE GREATEST HITS 2020"

いとうせいこう is the poet feat.満島ひかり

星野源 "宴会"

吉澤嘉代子 "赤青ツアー"

喋り足りなくて…春 (2日目)

フジロック(配信)

Bjork Orkestral (全4公演とも)

♡"坂東祐大×STUTS" Banksia Trio / Ensemble FOVE

 

☆音楽

OKAMOTO'S "Young Japanese"

Julie London "Fly Me to the Moon"

吉澤嘉代子 『赤星青星』

小川美潮 "窓"

Olivia Rodrigo "deja vu"

SUPERBEAVER "愛しい人"

東京事変 『音楽』『総合』

♡大豆田とわ子〜関連 『Towako's Diary』"Presence"

『フェイクスピア』オリジナルサウンドトラック

上原ひろみ 『Silver Lining Suite』

♡Doja Cat "Kiss Me More"

ジェニーハイ "華奢なリップ"

Plaid "Lilith"

NiziU 『U』 

宇多田ヒカル "君に夢中"

IVE "ELEVEN"

 

 

☆映画

Swallow

きみの瞳が問いかけている

♡ヤクザと家族 TheFamily

花束みたいな恋をした

横道世之介

マシューボーンの赤い靴

あのこは貴族

すばらしき世界

MISS ミス・フランスになりたい!

Undine (水を抱く女)

Nomadland

Pennies from Heaven

Smiley Face

♡マスカレード・ナイト (2回)

TOVE

Dancer In The Dark デジタルリマスター版

Petite fille (リトル・ガール)

 

❇︎今年ほんとに映画観てないですね…(家でドラマor舞台行脚のため)

基本こちらにまとめてます。ガチです。よろしくどうぞ。

ありきたりな女さんのMyページ(映画レビュー) - 映画.com

 

☆演劇・舞踊

そして春になった

ポーの一族

ウェイトレス

坂元裕二 朗読劇 (高橋一生酒井若菜 出演回×3公演)

♡シブヤデアイマショウ

コッペリア (新国立劇場)

カメレオンズ・リップ

♡フェイクスピア (東京初日、中日、楽日、大阪ラスト三公演)

モーツァルト

ケムリ研究室 『砂の女』を研究する

キネマの天地

新ロイヤル大衆舎 『王将 三部作』

衛生 リズム&バキューム

こまつ座 『母と暮らせば』

ケムリ研究室 『砂の女』(観劇&配信)

湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三

もしも命が描けたら

シス・カンパニー 『友達』

劇団☆新感線 『狐晴明九尾狩』

ベジャールバレエ団 (2演目とも)

ジュリアス・シーザー

♡Home, I’m Darling

THE BEE

♡パ・ラパパンパン (初日・配信・楽日)

阿佐ヶ谷スパイダーズ 『老いと建築』 (初日)

ジャック・ザ・リッパー

イモンドの勝負

アルトゥロ・ウイの興隆

海王星

ガラスの動物園

 

☆テレビドラマ

逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!

人生最高の贈りもの

絶メシロード 元旦スペシャ

名建築で昼食を スペシャ

監察医朝顔

アノニマス

青のSP

ウチの娘は彼氏が出来ない

♡おじさまと猫

にじいろカルテ

知ってるワイフ

江戸モアゼル

♡夢中さ、きみに。

俺の家の話

ドリームチーム

バイプレイヤーズ

♡直ちゃんは小学三年生

レッドアイズ

モコミ 彼女ちょっと変だけど

書けないッ

♡その女、ジルバ

♡ここは今から倫理です。

ナイルパーチの女子会

♡天国と地獄

君と世界が終わる日に

青天を衝け

ハルカの光

東京怪奇酒

となりのマサラ

きよしこ

昔話法廷

リカ〜リバース〜

♡ペペロンチーノ

イチケイのカラス

♡きれいのくに

珈琲いかがでしょう

♡大豆田とわ子と三人の元夫

着飾る恋には理由があって

恋はDeepに!

桜の塔

レンアイ漫画家

カラフラブル

ラブファントム

リコカツ

♡あのときキスしておけば

生きるとか死ぬとか父親とか

ソロ活女子のススメ

コントが始まる

♡今ここにある危機と僕の好感度について

コタローは一人暮らし

最高のオバハン 中島ハルコ

春の呪い

世界は3でできている

ナイト・ドクター

シェフは名探偵

ひきこもり先生

超速パラヒーロー ガンディーン

いいね光源氏くんし〜ずん2

彼女はキレイだった

サレタガワのブルー

ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜

ただ離婚してないだけ

推しの王子様

♡お耳に合いましたら。

#家族募集します

サ道2021

ボイスⅡ 110緊急指令室

TOKYO MER 〜走る緊急救命室〜

スローダンス

うきわ

古見さんは、コミュ症です。

トーキョー製麺

初情事まであと1時間

家、ついて行ってイイですか?

痴情の接吻

名前をなくした女神

光秀のスマホ

土方のスマホ

門島

ラジエーション・ハウスII

アバランチ

阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし

婚姻届に判を捺しただけですが

♡面白南極料理人

♡恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜

東京放置食堂

JKからやり直すシルバープラン

SUPER RICH

美しい彼

♡最愛

群青領域

和田家の男たち

スナック キズツキ

正義の天秤

二月の勝者-絶対合格の教室-

日本沈没-希望のひと-

それでも愛を誓いますか?

しかたなかったと言うてはいかんのです

雨の日

♡流行感冒

カムカムエヴリバディ

いつもふたりで

居酒屋新幹線

ロッパグラム

岸辺露伴は動かない

 

 

NODA・MAP 第24回公演 『フェイクスピア』 東京初日〜大阪大楽レポ

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NODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』
完走おめでとうございます!!!
 
初日の5月24日ソワレ
6月19日マチネ
東京千穐楽の7月11日マチネ
大阪前々楽の7月24日マチネ
大阪前々楽の7月24日ソワレ
千穐楽の7月25日マチネ
全62公演中6公演を観てきました。
 
こちらのレポは、東京初日観劇後に書いたものをベースに、全公演終了後に加筆しています。
 
 
いきなり私的な話で申し訳ないですが、元々舞台は好きだったけれど、明らかに演劇をガッツリ観るようになったきっかけが2012年の『エッグ』でした。
もうとてつもなく面白く、そして恐ろしく、すっかり何度も劇場に足を運んだり戯曲を読み込んだりせずにはいられないこころとからだにされてしまいまして。
それ以降の野田地図の公演は全て観てきた(まあたかが10年ですが)ため、新作のお知らせだけでも嬉しいのに、
うっそでしょ主演が高橋一生
私の大好きな一生さんがついにノダマップの主演!!
これはすごいことなんだよ、ねえすごいんだって、全国民聞いておくれー!!!
という気持ちで早3ヶ月弱。
 
初日全然まだじゃんとか、本当に宣言下で都の劇場で公演ができるのかなとか思っていたのに初日だった。おかしい。
というわけで野田さんの作品含め舞台好きとして、そして高橋一生さんファン(イセクラ)として、感情がごちゃ混ぜになった様をこれから整理していきます。
よかったらお付き合いくださいませ。
 

 前回の『Q』はこちら↓

sherry5honey7jouer.hatenablog.com

 

 
 
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【東京開演前 (ネタバレなし)】

 
・プレイハウスのドア入ってロビーの入口に当たる所?と言えばいいのかな。そこに非接触型の検温(手首かざしてピッって測れるタイプ。私は見たことない)とチケット確認&セルフもぎり。
 前回の『Q』の時めちゃくちゃ厳しかったガチ本人確認ですが、今回は拍子抜けするくらい一切ありませんでした。
 もうこの時下で公演ができるかどうかも、チケット買った人がその日に行けるかも、全部全部わからない状態ではやらない方が私はいいかなと思いました。*1
 
 
・物販はチケットもぎりの奥、いつもの場所です。今回はパンフのみ1300円。
 いつも思うけど野田さんケラさんクラスの舞台ってパンフも本当にすごく丁寧にこだわって誂えてらっしゃるのがすごくわかるんですけど、とにかく安すぎてびっくりする。もっと払わせてほしいです。
 
・座席は100%販売してた模様。ほぼ満席じゃないかな。私の周りには空席なかったし、最後列の仮設椅子席も埋まってたはず。
 
・プレイハウスは携帯の電波抑制装置付いてる劇場なはずですが、当たり前ですがスマホ等の電源は切ってください。
 今回は鳴ってなかったけど、先日の一生さん出演の朗読劇の時のマナーの悪さ、現場にいたけどありえなさすぎて本当に心底怒ってる。
 
まさかのプレイハウスの入口の思いっきり前で大倉孝二さんいらした。あと座席も近くでびっくりした。
ナイロンの公演も大倉さんもすごく好きで、本当に舞台の大倉さんの存在感って異常ですよね。いらっしゃるだけで笑えたり、不穏だったり、空気を掻き乱すのがわかるんです。
 今回一生さんと大倉さんの絡みが一番めちゃめちゃ楽しみだったのでとっても残念ですが、お身体が何より一番なのでゆっくりお休みになってほしいです。
 今年末ナイロンの本公演あるはずだし、そこでまた拝見できれば我々ファンは嬉しいです。俳優さん方にはとにかく楽しく健やかに長く芝居をしてほしい。
 
 
 
 
 

【本編  ※ここからネタバレします。未見の方は絶対見ない方がいいです】

 
 
 
 
 
どういう順番で話したらいいのかわからないので最初に思いっきりネタバレですが、
 ざっくりいうと前半はシェイクスピアの四大悲劇をなぞるような人生を語る男が二人、恐山のイタコの元に予約?がダブルブッキングして出会います。片方の"楽"と名乗る者(橋爪功さん)は幼少の頃に死んだ父親に会いたいようで、やがてその二人は死んだ父親と息子だということがわかります。
 後半は息子の同級生であるイタコ(白石加代子さん)の昇進試験を行いながら、やがてその息子の喪った父親=monoと名乗る者(高橋一生さん)は、日航機墜落事故の際に搭乗していたパイロットであることがわかり、死を覚悟しつつ残したレコーダーの声によって、自殺を考えていた息子は踏みとどまり生きることを決めます。
 こんな簡単に話せる作品ではないのだけど最も簡潔に言うならばこうではないでしょうか…
 
 
 
≪美術・衣装≫
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・客席に入って最初に目につくのが舞台の上方の「FAKESPEARE」の文字で、遠目でよくわからなかったけど素材としては骨みたいにも見えたし、銀紙みたいな質感にも見えたしよくわからなかったです。
 「R」だけ文字が反転していたのは、フェイクというテーマゆえでしょうか。
 パンフレットにある堀尾幸男さんの美術のスケッチ見たら、文字のところは仮設プロセニアムアーチだったんですね。
 本当の芸劇の舞台の中にプロセニアムアーチをさらに作るということは、この舞台で繰り広げられる物語の虚構性とメタ構造的なところの強める装置なのかなとわたしは推測しています。
 本来ならば舞台上で上演される作品は全て虚構であって、現実の観客である私達と対峙するものだと思うんですが、
『フェイクスピア』の面白いところはシェイクスピアのお話の引用もするし、シェイクスピアらしいおじさん(笑)も出てくるし、途中でフィクションである星の王子様まで出てきちゃうし、何より話の軸は「死者が醒めて見る夢(同時に生者も見せられている夢)」(←この表現が適切かは微妙)だと思うので、『フェイクスピア』というフィクションの中に更にフィクションが沢山出てくる。
 だからこそ全体の解釈が本当に難しくて最終的には私はお手上げだったんですが、装置として視覚的にそういう意図を含ませた可能性はあると踏んでます。
 
・『エッグ』の時に大活躍だったブレヒト幕が今回も大活躍で、各演目観るたびにあの転換の仕方凄いなと思ってます。
 幕を動かす人も、幕に合わせて入れ替わる人も、全員のタイミングと速さが求められると思うので、それだけで体力めっちゃ使いそう…
 あと今回はキャスター付きのどこにでもありそうな椅子をあんなものやこんなものに見立てる…という使い方が見事で、一歩間違えれば速度が出すぎて怪我しそうなので、うまく制御されているのもまた凄いなと思いました。
 
・よーく見ると日本的な要素が溶け合っているのが野田さんらしいというか、美術・衣装・美粧・振付等視覚面のチームの特徴なのかなとも思いました。
 最近の『東京キャラバン』のシリーズをいくつか報道等で拝見していた時の雰囲気と結構似ているなぁと感じてました。
 例えば、白石さん演じる皆来アタイの衣装に能の面の絵が大胆に描かれていたり(地がピンクで白石さんにとてもお似合いですごくきれいな衣装だった)、
アンサンブルさんが男女ペアで踊るときに男性が女性をリフトして女性が操り人形みたいな独特な動きをするのが浄瑠璃みたいだったり、
上述の美術スケッチの中で舞台に何本か刺さっているように見える柱に「シテ柱」「ワキ柱」と書かれていたり。
 
・柱は特に劇中でもかなり目立っているんですが、恐山に来た人間=生者は同じところから降りないと帰れないという台詞とか、
 最初下手側から出入りしていた楽とmonoが何度もレコーダーの箱を奪われるのは死者の夢を繰り返していたからで、逆に後半で上手側から楽がmonoを探しに行く流れは、思いっきり能舞台の構造をなぞってるんだろうなと後で気づきました。
 
 
 
≪一生さんについて≫
 
・とにかく一生さん、走り回りすぎてノダマップ〜!!!感が凄かった。
 作品違っても毎回なんだかんだ運動量…とは思うんだけども、前回『Q』の時は志尊くんめっちゃ走るな〜って感想だったので、ただいま不惑になられた一生さんがあんなに走り回るのは本当にすごい。
 舞台装置も山を作っている分、高低差が激しい構造なので、あれを走り回るのは本当におかしい…体力おばけか…
 おそらく野田さんの舞台は日本で一番1公演が濃密かつ全体スケジュールも長丁場で過酷に違いない舞台だと思うので、本当に身体だけは大切にしてください…勿論全カンパニーの皆さんそうなんですけど。
 
・monoと楽の会話の中で、いやいやこれシェイクスピアのアレじゃん!とパロディのような家族の事情を垣間見させられるのですが、イセクラ的には一生さんの直近の舞台が『天保十二年のシェイクスピア』でよかったのではないでしょうか。
 あの舞台を観ているといろいろシェイクスピアの話の良いとこ面白いとこ取りだったから、十分すんなり理解できる素地ができていたのだなと、改めて井上ひさし先生を有難く思いました。
 一生さんと橋爪さんのやりとりが本当に面白いし、とにかく芝居がお上手な方同士なので「これは良いものを見ている…」としみじみ思います。
 
・まさかのイセ子大活躍!!!!!笑
 一生さんは楽との会話の中で4大悲劇の女性をやりつつ、最後にハムレットのお父さんの亡霊になるので、いやそこかいな!とツッコミたくなるんだけど、まぁそこまでの女性役が上手いんだわ…声音・表情・佇まい、全てがハッとするほど色っぽい。美しい。
 あとその女性役の芝居の後、気を失って倒れるみたいな流れを繰り返すのですが、なぜか舞台の淵のぎりっぎりのところで倒れる笑。 その倒れた時のお顔も本当に美しいんですよ… 最前の人、顔めっちゃ拝めるよね?近すぎでは?最前のイセクラ大丈夫?生きてる?(私も前方のチケットほしかったよ!!!)
 今回のキャスティングの妙というか、この一生さんの中性性みたいなところが存分に活かされているところ、すごく嬉しく思いました。
 そういえば、最近だと『天国と地獄』で日高彩子の時の芝居で何度「かっ、かわいい…」と思ったことか…(※40歳男性です)
 私は未見ですがオールメール版『から騒ぎ』のビアちゃん(ビアトリス)をめっちゃ観たくなりました…円盤買おっかな…だって某めっちゃチュチュするシーンしか観てねえんだもん…
 
亡霊芝居中の一生さんのセルフエコーがすごく面白かったので観てほしい。
 笑うシーンじゃないのに笑っちゃうって。
 
・一生さんのことたくさん書きたいんですが、とにかく私は"mono"という役名がすごく印象に残ったし、野田さんが一生さんにこの役を託してくださったのが嬉しい。
 冒頭で「monoは一つの音」という台詞があったので、最初音源のモノラルとステレオの"mono"を連想して、monotone・monochrome・monolologue・物・者などいろんなイメージが広がりつつ、
「monoが語る」=物語る物語なわけで、彼が居なければこの物語は存在しえないわけだし、monoの元来の意味から連想していくと、単一であることは唯一無二であることだと思うし、様々なイメージを重ねられる記号のような音の響きと運命を背負ったmonoという役柄は、一生さんの芝居という行為や俳優の存在に対する考え方と完全に合致するところがあると思うんです。
当たり役というのとはちょっと違うけど、この役は他でもないこの人がやるべきなんだということだけは強く思いました。*2
 
 ・先ほども書きましたが、一生さんの中性性も然りなんだけども、虚実とか生死というそういうものたちの微妙なあわいを表すのが本当に絶妙で、そういう象徴みたいな"mono"はやはりぴったりだなと思うんですよ…
 
・最後に思い出しましたイセクラさん方すみません衣装ね!
 
 もう写真出てるので見てほしいのですが、髪型が僕キセ・みかづきくらいの時のふわっふわパーマに戻っていて、日高との落差でまず死にます。覚悟してください。
ちなみにカテコでお辞儀する度、その髪がふわふわ揺れるのでまた死にます。心臓何個もプレイハウスに捨てる覚悟してきてください。
衣装は茶系のブルゾンのようなものに、黒のズボンとブーツのような靴。
終盤で分かりますが、その下にパイロットの服として白シャツ・黒ネクタイも忍ばせています。
ブルゾンは腕から先の部分の内側(体側)が空いていて腕の出し入れができ、ちょっとポンチョ?みたいに見える瞬間もあったり。
劇中で腕の出し入れしているところに意味があったのかはよくわからなかったです笑。

 
≪言葉について≫
・野田さんの頭の中は一体どうなってらっしゃるのか、毎回覗いてみたくなるくらい台詞が面白い。というか、言語って面白い、とすら思います。
おなじみ言葉遊びは今回もちりばめられており、
    呼んでません⇄読んでません
 置いてかれる⇄老いて枯れる
 四大悲劇⇄呼んだ悲劇
 イタコ⇄(恐山に)居た子
 皆来(ミナライ)アタイ⇄見習い
 心当たり⇄心、辺り
ざっと上げるとこんな感じでしょうか。
 
・パンフレットの稽古場見学記も恒例ですが、今回寄稿されている角田光代さんの文章が素晴らしく、ぜひ購入された方はお読みください。
 普段から「言葉で現実を再構築する」小説をお書きになっている視点から、台本と台詞の関係について言及されているのですが、
 先程挙げたような言葉遊びの台詞を台本で読んだとして、それは文字面の理解、つまり記号の理解であり、
 役者の肉体を通して声で発せられることで、初めて現実となるというような旨を書かれていて、かなり私の中で作品に対しての解像度が上がりました。
 
・更に踏み込んで考えるとき、例えば"mono"という明らかに記号的存在が主人公に据えられている作品において、シェイクスピアの作品群或いは『フェイクスピア』というフィクションそのものにおける言葉が役者の肉体を通して上演され、現実として立ち上がっていく様を見ることができるのは、「文字通りに」記号的な文字面の羅列が現実へと変化していくのを目撃している瞬間であるし、
 monoが携えていた箱=レコーダーは現実に存在している「コトバの一群」であって、リアルな肉声を記号的存在が運び、現実世界の私たちに再度もたらすことで、もうどっちがフェイクまみれかわからないような作品世界と現代世界の中で、monoとレコーダーは虚実が混ざりながらも特異な存在としてとても際立つように思いました。
 
角田さんも言及されていましたが、劇中で生死にかかわらず「声が聞こえていること」を存在として認識するイタコの在り方は、私もとても印象に残りました。
 つまり、声がある所に死者と生者・虚実が交わるという点でも、イタコの居る恐山を舞台にしたことは必然の流れだったなと考えられるし、『星の王子さま』に出てくる
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」
という有名な台詞を、すごく広く深く展開したら『フェイクスピア』になるし、劇中で引用をするに至ったのかなとも思いました。
 
 
≪役者さんについて≫
 
・ナイロンファンとしては村岡希美さんも好きなんですけど、もっと出番があっても良かったのでは…!もっとお芝居拝見したかった!
 とにかくお声が静かに艶があって素敵なんです。途中でイタコ昇進試験のシーンで真っ暗になるけど、暗闇の中でも村岡さんのお声はすぐわかる。
 終盤の機内のシーンも、コックピットに居るパイロット以外のキャビンアテンダントの役柄が一人しかいないので、
 搭乗客に対してずっーと一人で指示を呼び掛けているんですけど、それがまたすごい緊迫感が出ていて。
 どういうシーンでもお声に存在感があって、きれいに響いて埋もれないのが凄いと思います。野田さんも「もっと評価されるべき」とパンフレットに書かれていたけど私もそう思ってます。(とりあえずまずは阿佐ヶ谷スパイダーズの公演を観に行かねば)
 
・野田さんはもう出て来られるだけで優勝なので観てください。登場だけで面白すぎる。
 シェイクスピアのガチな扮装で踊るあのシーンの為だけにもう一回観に行きたい笑。
 
・代役で入った伊原さん。大倉さんの件は残念ではあるけれど、三日坊主のなんというかチャーミングさがよくわかったのと、例えばレコーダーを盗まれないように手にもって高く持ち上げるところ等、体格の良さが際立つようで伊原さんで良かったのかも。
 伊原さんと長年の友人である川平さんが、ある意味三日坊主と対になるアブラハムだったのはすごく良くて、あの声の通り具合と登場の時の勢いやコミカルさが素晴らしかった
 うっかり「楽○カードマンッ!!!」って言いだすのではと思ったのは私だけでしょうか…笑
 
上の二人はハムレットのローゼンクランツとギルデンスターンに当たる、というのがはっきりと劇中で示されるのですが、最初「神の使い」と名乗っているんですね。
 最後まで見ると結局「使者」⇄「死者」であり、彼らも事故で死んだパイロットであったことがわかります。
 神が一体何なのかがよくわからず観ていて、あと近年の野田地図作品の着地点が【戦争】に行きつくことが多かったのもあり、ずっと自分の中でミスリードしていて、「神の使い」すなわち神風にまつわるパイロットの話なのではないか…と結構終盤まで思い込んでいたせいで、かなり自分の中で消化不良を引き起こしてしまってました。
    一生さんの衣装のブルゾンもちょっとパイロットっぽかったし、特攻隊で死んだお父さんなのかなとか頭をよぎってしまった…
 
 
前田敦子さんが野田さんの舞台に出るイメージが正直なかったけど、”星の王子様”とか”白い烏”とか、決して明るくない物語の中でひとすじ風を吹き込むようなさわやかさがありました。

≪全公演終了後&戯曲読了後の小ネタ感想≫

・東京楽も大阪楽も、本編直前のBGM"Sing Sing Sing"が他の公演日よりも長めにかかっていた気がするんですが何かの意図があったのか

 

・何度観ても第一声の「ずしーん」の声の凄みで震える。

何回観ても「芝居観てるな」って感覚と緊張感が、一瞬で全身を駆け巡る感じだった。一生さんの声と佇まいの凄まじさを全公演感じていました。

 

・白石さんの挨拶が、大阪は東京より若干テンション高め?声が大きい?気がした。ちなみに「嘘八百物語」ではあまり笑いが起きてなかったななんでだろ舞台好き少ないのかな

 

・アタイ→monoパートで言うと、伝説のイタコ登場直後の「執拗に若さを強調した挙句」とか、上手端の柱まで追い詰められたmonoが「あの時の感じの人とも会いたいかなあ」とか話すのめちゃくちゃ面白すぎて笑う本人たちのこと考えると笑っちゃいけないのに笑っちゃう

 

・大阪では「分け目、分け目」も地味にバージョンアップしてるというか、ジェスチャーが大きくなっていて、それで上手に一人居る一生さんが結構笑っててごまかしてる率上がってるような気がしましたw

 

・楽の「国王/将軍/領主だったんですよ」で笑いが起きるの楽しいですよね何回か観るとわかってくるから主に初見のお客さんなんだろうけど、楽のなりきり具合が真面目になればなるほど笑えてしまう

 

・アタイが「変なのが来ちゃったよ〜」っておろおろするところ、笑いポイントなんだけどその直後にお母さんが伝説のイタコとして来てくれるの、本当に愛ですよね

 

・オタコ姐さんアタイへの気にかけ方、世話を焼きながらなんだかんだ優しいところもとても好きだった並んで歩く時肩を抱いてたりとか、「どうしようもないバカだけど、かわいいんだよ」と話したりとか

 

・『オセロー』のくだりの後、monoが匣を開けることでまた序盤のシーンのように大木たちの情景に戻る唐突さにいつも驚くんだけど、言の葉を掴み匣に収めるmonoの手の美しさ、声音の使い分けの凄さ(力強さとそれこそイセ子の時の女性っぽい声音とを行き来する感じで抑揚を付けてる感覚に思えましたそれを大楽近くでやっと気づいて鳥肌たった…)、全て本当に印象的で好きなシーンでした。

 

・イセ子は自然になりきった瞬間から胸元を押さえる手も、ハンカチを手渡す手も、しみが取れない両手を凝視するのも、全ての手の所作も美しすぎて鼻血レベルだったし、それがまさか大楽のカテコにまで活かされるとは…( #フェイクスピアカテコの高橋一生 で検索してください)

 

mono、三日坊主、アブラハムの3人が並んでるシーンはそこまで多くはないと思うのですが、「神様からの使いのmono〜」でmonoに抱きつくところ、大楽でmonoが「うわぁ困ったなあ」みたいな顔してるのが最高に可愛かったし、抱きつく方もギュッギュと感が初日から増してたと思うんですよえーかわいい

 

・オタコ姐さんと三日坊主の仲良しぶりというか息のピッタリ合ってる感じ、すごく好きだしだからこそやっぱり結末まで知ると悲しくもなる… 

あと三日坊主がオタコ姐さんに吐き出させられ、投げつけられた大根ゼリーを、ササッと拾ってペロッってさりげなく食べてるのが毎回好きだったんですけど可愛すぎでは

 

 

・大阪で2階席・3階席を初めて経験したのですが、セットを俯瞰することで、あのパタパタ開閉する床板に描いてある模様が飛行機のエンジンにも、或いは森の木々の葉の模様のようにも見えることに初めて気づいた。その裏に隠れて次のシーンに向けて出入りしている様子も一部見られて面白かったです。

あと床やブレヒト幕に見られる黒の筆致、「森」の深い木々のようにも見えたし、飛行機が落ちて地を引き摺った跡のようにも見えました。

 

mono夢から醒めて真実を思い出してゆく度に、木が地から這い上がり起き上がるような音が後ろで鳴っていた?ことに前楽くらいでやっと気付きました…彼は"大木"の"一葉"なんだよなと…

 

mono楽の親子二人の、ト書きにすら書かれてないユニゾンが素晴らしくて。

最初にアタイに伝説のイタコが憑依したところで、背後で「この人頭おかしい?」みたいにジェスチャーしてたりとか、

昇格試験に協力してほしいとお願いされた時に、オタコ姐さんに対して「誰にとっても明日は大切な日です」「それ何度も聞いてます」と反抗するところ、楽がまあまあみたいな感じで宥めてたりとか、

「星野玉子様」の手紙のシーンで手紙を開いたり漢字を読んであげたりするところとか(ここはト書きにはあるけど毎回なんとなくニュアンス変えてる感じ)

全部中のお二人が稽古や公演期間を通して肉付けされていったのかな?野田さんの演出なのかな?とにかく気づいたら親子なんだなあときゅんとしてしまって

 

シェイクスピア登場後にmonoに柱の所で羽交い締めにされる担当ことアンサンブルの白倉さん、公演終盤はずっと安定のぐるんぐるんされてたっていうかめっちゃ柱にホールドされてた笑。

完全にあのシーンの二人の絡みを観るのが楽しみになっていたイセクラ大量にいらっしゃったと思います

あと白倉さんのツイート拝見してて笑っちゃいました一生服従高いオーダーメイドチャリ自宅で手料理振る舞いコースが見えます

シェイクスピアはなんでト書きに書いてないのに、四代悲劇のタイトル叫びながらあのえげつない傾斜走り回るんですか???雷を「ゴロゴロピカーン!」って笑わせてくるんですか???(面白すぎwww)

 

シェイクスピアシェイクスピアが乗り移ったアタイそれを真似するmonoの「To be 〜」の三段活用、もう本当に面白すぎるのでやめてほしいし、大楽近づくほどもはや白石さんも一生さんもハメの外し方が凄くてダメだったwww

白石さんの動きとふざけ具合がそもそも凄くて、それで一生さんが笑いを堪えきれないし、衣装の襟元で口元隠して笑ってるし(その所作と横顔がまた綺麗すぎて堪らん…)

一生さんかなり誇張してもはや変顔みたいなレベルで真似をするんですよwwwそれで笑いすぎて後ろ向いちゃったりするから白石さんに客席の方向へぐるんとされてたし、それでももう一回「To be …」をやりかけるというスーパー仕様に変わっていったため、最後はもう客席から拍手起きて一旦本編の進行がそこで止まるのが恒例になっていましたwこのくだりだけ永遠に見ていたい

 

・星の王子様が息をしていないことを確かめるタイム、公演終盤になるにつれ長くなっていて、楽が王子様にずっと張り付いてるものだからmonoが引き剥がそうとしたり宥めたりするんですけど、楽がさりげなく反応してて面白かったですw楽もちょっと成長したのかな笑

 

・「夜間飛行」という名の「呼んでいない悲劇」へと飛び立つ前に別れなければならない息子に対するmonoの表情、毎回泣きそうになるのですが、前楽辺りで一生さん本当に泣いてた?かかなり涙目だったのが忘れられなくて。

それから、イタコである自分は母に会えないけど楽には父親に会って欲しいから、と最終的にmonoを呼び寄せたアタイのことを考えると、最後に「だからありがとうって言っておいて。僕を呼んでくれた、お前の同級生に」と楽に言い遺して飛び立っていくmonoはあんまりにも悲しすぎるし、

しかもその直後にパイロットとして、プロとしての仕事をする顔に一瞬で切り替わるのが凄すぎて。その後、元アブラハムである副操縦士と談笑とかしてるんだけど(大楽は少し笑って話してる感じが強かった?気がする)、ちゃんと離陸準備してますよって感じなのがより一層印象に残りました。

 

・橋爪さんのラストの一人台詞の表情があんまりにも素晴らしくて、大楽は前から舞プロ枠三列目センブロで観てたんですが、あまりに凄すぎて息が止まっていたと思う。

あの一連の台詞を橋爪功という名優が話す様を観られるだけで12000円の価値があるし、それで舞台が実質締められる(その後白石さんの挨拶はあるけれども、あれはフィクションから現実への橋渡しというか逆憑依?みたいな儀礼的側面としての役割を担わされてると思うので、本編ラストは実質橋爪さんの台詞かと思ってます)のが本当に素晴らしくて、あれ以上の幕引きはないのではないかと。 

 

・だからこそ、マジで永遠+66年後くらいを迎えた頃にもし再演があったとして、"楽=高橋一生"が実現したとしたら泣くな…と…

 

 

≪物語の主題と解釈について≫
 
・正直"星の王子様"を登場させた意図を全ては解釈しきれなかったのですが、サン=テグジュペリと楽の父親であるmonoはまず墜落事故で亡くなった点で重なる存在ですよね。
 また、登場人物の中で”星の王子様”は【被創造物(者)】です。「息をしていない」けど、サン=テグジュペリによって創造された存在で、それはまたmonoが楽に届けようと残したレコーダーの声と同様の存在なのだと思います。創造者と被創造物が2組存在することになる。
前者はフィクション、後者は現実事故のことを鑑みるならばノンフィクションであって、既にこの2つについて考えるだけでも虚実の境目が混ざっていくのだけれども、生み出された意図の有無やその存在の虚実にかかわらず、被創造物は誰かを守り、ある種の希望のようになりえる可能性を感じました。
 
・これ間違っていたら申し訳ないですが、星の王子様の台詞で「僕が生み出されたのは箱を開けさせないため」みたいなところありませんでしたっけ?
 箱=レコーダーではあるけれども、劇中に神話の要素もあったせいか、あれは”パンドラの匣でもあったのか?と思いました。フィクションがフェイクな言葉を以っても生み出される所以は、現実に災いを起こさないため。虚構で様々なことを描いて見せることで、現実に良い形で還元していくようなそういう意味もあったのかな…とも思うし、
一方、パンドラの匣がレコーダーなのであれば、たった「永遠+36年前」の事故の話をあれだけ忠実にフィクションに持ち込むことすらも、人によっては「それはまだ早すぎるし開けてはならない」という解釈をする人もいるのかもしれないですよね。
 
・また私的な話ですが、今回私が消化不良だった一因は、私自身が日航機事故について殆ど知らなかったことが大きいです。事故の後に生まれた世代です。
 ほかの方にも「これは年齢案件」と言われてちょっと気持ちが軽くなりましたが、観劇中は「あの事故のことかな?」とは思いつつも終盤まで確信が持てなかったです。
 帰ってから事故のことを調べたし、親に事故の報道について聞きました。そもそもどの程度まで報道されていたのか、世間一般の認識はどこまでだったのか、当時生まれてない人間にはその感覚は全然わからないからです。
 正直、以前までの野田地図作品で扱っていた【戦争】の方が、必ず学生時代に習う内容ですから自分にとってはなんとなく理解しやすい要素が多く、もっと昔の話なのにどこか近いとすら感じてしまったんです。私はその感覚がちょっとショックだった。人の死に近いも遠いも、軽いも重いもないはずなのに。
 私のその個人事情を物語のわかりにくさ・難解さとつなげてはいけないと思うのですが、どうしてもハードルが高かったです。墜落までの描写の緊張感や、椅子と身体を使った表現の見事さにただ圧倒されて、何も考えることができませんでした。
 
・終盤、客席からすすり泣く声がかなり聞こえてきたことも印象的でした。
この当時を知る人間にとって、本作での事故の描き方はどんな感覚を与えるのか。生々しいほどに要素として取り入れているのか、フィクションと現実の距離の取り方としてどのように感じるのか。
そして、例えば江戸時代の歌舞伎の新作なんかは何かの事件が起きてすぐ作品にしてセンセーショナルな評判を残した作品もあると聞いたことがありますが、果たしてどのくらいの年月を挟めばフィクション化を世間や個人が受け入れられるのか、風化をさせないためにはどうしたらいいのか、問うても問うても答えの出ないことが自分の中でせめぎ合って止まらずにいます。(この辺り、ぜひ特に30代以上の世代の方にお伺いしたいです)
 
・冒頭から「頭を上げろ!」の台詞や日付、「永遠+36年前」という表現から、気付ける人は事故のこと気付いていたんですよね。
 冒頭の方の台詞で「頭を下げろ!」と突拍子もなく叫んでいたと思うのですが、一生さんの言い方が面白くてちょっと笑ってしまったんですよね。でも最後まで観て、それは全然笑えることではなかったことに気付いて、ちょっと血の気が引く気分でした。
 でもそうかと思うと、楽の自殺未遂のエピソードで隣の人が自殺して人身事故が起きて、「ご迷惑をおかけしております」という駅のアナウンスに対して「人が死んだことがご迷惑になってしまった」と楽が突っ込んでいたと思うんですが、それにクスって笑っている、明らかに私より年上の方々も居て。いやそこ笑うとこじゃないよね?って私はすごく引っかかってしまって。
 この2つは同列にならないのかもしれないけど、私にとっては近い話で、知らないとか遠いとかそういうことだけで人の死とか悲劇って笑えてしまうかもしれない人間ってなんなんだろう、って思ってしまいました。
 

 
 
≪冒頭とラストシーンについて≫
・本作の最初のシーンが「誰にも聞かれないまま音を立てて倒れていく木」をアンサンブルのみなさんの美しい身体表現で表しつつ、
 monoが「誰にも聞かれない言葉は言葉たりえるのか」というような台詞で始まるのが素晴らしくて。
 monoは死者なので、厳密にいえば彼が遺した声が届いたのかは本人は知る由もないはずだけど、そこにイタコという存在を媒介することで、楽に届けることができました。
 楽はそこで「『楽』『しんで』生きていく」と話して、それを見て静かに笑ってmonoが去っていく(ここの一生さんの表情が本当に素晴らしい…)というところで物語は閉じられます。
 monoが自分の声が届いたとわかることってすごく希望だし、フィクションだからこそできることですが、例えば実際のレコーダーの中の「コトバの一群」が死者が願った相手の元に声として現実に届けられたものもあっただろうし、私のような後世に生まれた人間もまた虚構の形としてそれが今届いているんですよね。
 誰にも聞かれないmonoの存在を存在と認められるのか、に対しての答えは私にはわからないけれど、少なくとも重い話の中で「届いた」ということはすごく眩しく、救いに感じました。
 
・そして、この時下を考えると、「誰にも聞かれない、見せられないままお蔵入りになった作品」が沢山あったと思います。
 戯曲や美術や役者や照明や衣装や音楽や、いろんなものが準備されていたとしても、それら単体では【演劇】ではないのだと思います。
 舞台に乗せて、上演して、客を入れることで、初めて成り立つものだと、きっとお考えになっている方が多いと思います。
 きちんと初日に幕が開くことも、楽日を迎えられることも、況してや地方公演までできることも、今や奇跡だと噛みしめるものになってしまったからこそ、目の前にある言葉たちが「誰かに聞かれた言葉」になって良かったと心底思いました。
 
改めて宣言下の隙間を縫って、東京→大阪へと辿り着けたこと、本当におめでとうございます。
この劇の題材である日航機事故の出発地と辿り着けなかった目的地としても、
高橋一生さんのファンとして昨年の『天保12年のシェイクスピア』の無念を考えても、
公演が進んでいくこと、毎回上がってくる感想やカンパニーの中の皆さんのSNSを見ること、全てが本当に自分のことのように喜ばしく思う日々でした。
お祭りのようで、それでいてずしーんと重く確かな現実に向き合わせた2ヶ月を、本当にありがとうございました。
 
 
 

 

 

*1:でも普段だったら前回並みの本人確認設けて然るべきと思います。ノダマップさんのいいところは毎回当日券出してくださるところで

近場に住んでるともうそれでいつでも観られるし、観客の可能性が増えるしとても良いけど、
そこまで柔軟に対応されても転売が無くならない以上、チケトレやリセールを併用しつつ厳しくするしかないと思う

*2:私から話すのは恐れ多いので、一生さんのお考えがよく分かるインタビューをぜひ読んでいただきたい…

www.nikkei.com

www.lmaga.jp

*3:パンフレットの南直哉さんと野田さんの対談が凄まじすぎたので、絶対に読んでほしい。  

  劇中にも聖書(言葉の葉の話、アブラハムの役名等)や神話(エピメテウスの話?だったと思う)の引用がふんだんに盛り込まれているのですが、難解だけどめちゃくちゃ面白かったです。これは理解しきれないのでまた観に行くまでの宿題としたい気持ち。